大阪渋谷麦酒
よみがえる国産ビールの始祖
リユースびんで受け継ぐ「挑戦」
日本初の国産ビールを醸造・販売した実業家の意志を受け継ぎ、新たにクラフトビールの醸造・販売を起業、リターナブルびんを使用し続ける大阪渋谷麦酒 代表 渋谷香名さんに、これまでの活動と今後の展望についてお話を伺いました。
大阪渋谷麦酒(おおさかしぶたにばくしゅ) 代表 渋谷 香名 氏
国産ビールの起源は大阪にあり
時を超えて継承される夢
大阪の歓楽街、北新地に立つ「国産ビール発祥の地」と刻まれた石碑。日本人による国産ビールの醸造・販売の起源は大阪で、明治時代の実業家・渋谷(しぶたに)庄三郎が1872(明治5)年、本格的なビール醸造・販売業者となったことに始まります。「渋谷ビール」は9年ほどの短い期間で醸造・販売は終了することとなりましたが、この時に培われた技術は後に生かされ、国内でビール製造が本格化する礎となりました。
香名さんのご主人の渋谷尚彦(しぶたにたかひこ)さんは庄三郎の末裔にあたり、大阪・天満で270年余の歴史がある家業の寝具店の九代目。結婚式当日に四代目・庄三郎が日本人として初の国産ビール会社を創立した人物であったことを知り、漠然とビール製造の復活を思い描くようになりました。その後、子育てが一段落ついたことを機会に、地域活性にも一役買おうと、2019年よりビール醸造を目指して活動を開始します。
香名さんのご主人の渋谷尚彦(しぶたにたかひこ)さんは庄三郎の末裔にあたり、大阪・天満で270年余の歴史がある家業の寝具店の九代目。結婚式当日に四代目・庄三郎が日本人として初の国産ビール会社を創立した人物であったことを知り、漠然とビール製造の復活を思い描くようになりました。その後、子育てが一段落ついたことを機会に、地域活性にも一役買おうと、2019年よりビール醸造を目指して活動を開始します。
醸造家となり
そして会社設立へ
醸造に関しては、何も分からない状態からのスタートでした。当時、勤務していた医療事務と酒販店の2つの仕事と並行しつつ、まずは無料のクラフトビールの講習会や金属製のタンクで製造するクラフトビール醸造所の見学などを経て、ポリ袋を使って醸造する石見(いわみ)麦酒の石見式を知ります。工程やコスト面での効率性を考慮して、いずれうちの商品となるものは、この製法で醸造する方針を決めました。石見式製法を行うクラフトビール醸造所を調べ、大阪市生野区の有本麦酒株式会社に指南をお願いして、2020年4月から研修に通い始めました。醸造や設備のことなど一から教わり、研修後も度々アドバイスをいただいています。
こうして2021年、藤井寺市役所のすぐ脇の立地に「大阪渋谷麦酒」を設立。2022年3月に酒類等製造免許(発泡酒)を取得し、オープンに先立って同年5月に飲食店に向けたお披露目会を開催。その後、直売所のオープンとともに、「河内乃えーる」の販売を開始しました。店内は、醸造所と直売所のカウンターになっており、その場でびんビールを購入できます。 また「河内乃えーる」は、大阪の特産物として「大阪産品(おおさかもん)」にも登録されています。
こうして2021年、藤井寺市役所のすぐ脇の立地に「大阪渋谷麦酒」を設立。2022年3月に酒類等製造免許(発泡酒)を取得し、オープンに先立って同年5月に飲食店に向けたお披露目会を開催。その後、直売所のオープンとともに、「河内乃えーる」の販売を開始しました。店内は、醸造所と直売所のカウンターになっており、その場でびんビールを購入できます。 また「河内乃えーる」は、大阪の特産物として「大阪産品(おおさかもん)」にも登録されています。
目標は「皆さんに喜んでいただくこと」
SDGsへの取り組み
当社の経営理念は「造るビールで、皆さんに喜んでいただくように」としており、人にも地球にもやさしい企業であり続けることを目指し、SDGsにも積極的に取り組んでいます。
まず一つ目は、大阪府南河内郡太子町特産「太子みかん」の使用。育成途中で間引いた「摘果みかん」の多くは捨てられていましたが、それを無駄にしないため、地域の特産品をビールのアクセントとして香り付けに使用しています。
二つ目は、ビール醸造の都度に出る25〜30kgの麦芽カスの有効活用。以前は、行政に相談して紹介された大阪府立農芸高校に牛の飼料となっていましたが、現在は大阪府内の養鶏場の飼料として活用されています。
三つ目は、一部の商品ラベルのイラストやタグのフォントなどのデザイン。大阪府狭山市にある障害者福祉施設「たんぽぽの丘」に原案制作を依頼、入所者さんが作った貼り絵などを使用しています。またその売上の一部は、「たんぽぽの丘」の活動資金にもなっています。
まず一つ目は、大阪府南河内郡太子町特産「太子みかん」の使用。育成途中で間引いた「摘果みかん」の多くは捨てられていましたが、それを無駄にしないため、地域の特産品をビールのアクセントとして香り付けに使用しています。
二つ目は、ビール醸造の都度に出る25〜30kgの麦芽カスの有効活用。以前は、行政に相談して紹介された大阪府立農芸高校に牛の飼料となっていましたが、現在は大阪府内の養鶏場の飼料として活用されています。
三つ目は、一部の商品ラベルのイラストやタグのフォントなどのデザイン。大阪府狭山市にある障害者福祉施設「たんぽぽの丘」に原案制作を依頼、入所者さんが作った貼り絵などを使用しています。またその売上の一部は、「たんぽぽの丘」の活動資金にもなっています。
当然ながら今回、取材対象となっている回収びんの使用にも力を入れています。販売当初はワンウェイびんを使用していましたが、大阪でリターナブルびんの取り組みをしているRびんプロジェクトに問い合わせ、大阪市内にある洗びん業者の株式会社成尾屋を紹介してもらいました。
実際の回収は、店頭に設置した空きびん回収ボックスで行われています。店舗のある藤井寺市の資源物収集は月1回のみです。ペットボトルは拠点回収しており、その回収拠点が市役所にあるため、多くの方がすぐ近くの醸造所・直売所に立ち寄って、空きびんを持ってきてくれます。目安としては20ケース(1ケース当たり30本)貯まった段階で、成尾屋に納品。空きびんは月間1,000本の販売と想定すると、1/4の250本程度が回収されています。
実際の回収は、店頭に設置した空きびん回収ボックスで行われています。店舗のある藤井寺市の資源物収集は月1回のみです。ペットボトルは拠点回収しており、その回収拠点が市役所にあるため、多くの方がすぐ近くの醸造所・直売所に立ち寄って、空きびんを持ってきてくれます。目安としては20ケース(1ケース当たり30本)貯まった段階で、成尾屋に納品。空きびんは月間1,000本の販売と想定すると、1/4の250本程度が回収されています。
今後の展望・課題について
大阪渋谷麦酒は、2025年に醸造所の移転を予定していましたが、移転先の都合により2026年〜2028年に変更になりました。移転先の面積は現在の3〜5倍あり、タップルーム(醸造所でつくられたビールを提供する飲食スペース)の併設も検討しています。また、キッチンカーを所有しているので、より多くの人に弊社のビールを知って、楽しんでいただくため、フードイベントなどへの積極的な参加も予定しています。
一方、回収びんに関してですが、当初より洗びんに関わる費用が値上がりしてきている現実があり、コストアップの懸念があります。やはりビールは缶で飲むよりも、びんが美味しいと思いますし、また、贈呈品やお土産に選ばれるクラフトビールはびんの方が高級感を演出でき、より付加価値を表現できますので、びんにこだわりたいと思います。今後は一企業だけではなく、業界全体で回収びんを使用できるシステムの必要性を感じています。各醸造所が協力して、共通で使用できるクラフトビール用のリターナブルびんの開発等も考えています。
先祖より意志を受け継ぎ、地道な活動からようやく大阪渋谷麦酒は復活を遂げました。今後もより多くのお客さまに楽しんでいただけるよう、挑戦を続けていきたいと思っています。
一方、回収びんに関してですが、当初より洗びんに関わる費用が値上がりしてきている現実があり、コストアップの懸念があります。やはりビールは缶で飲むよりも、びんが美味しいと思いますし、また、贈呈品やお土産に選ばれるクラフトビールはびんの方が高級感を演出でき、より付加価値を表現できますので、びんにこだわりたいと思います。今後は一企業だけではなく、業界全体で回収びんを使用できるシステムの必要性を感じています。各醸造所が協力して、共通で使用できるクラフトビール用のリターナブルびんの開発等も考えています。
先祖より意志を受け継ぎ、地道な活動からようやく大阪渋谷麦酒は復活を遂げました。今後もより多くのお客さまに楽しんでいただけるよう、挑戦を続けていきたいと思っています。
大阪渋谷麦酒
〒583-0027 大阪府藤井寺市岡1丁目2−6