五所川原料飲店組合
「一升びんを捨てないで!」
五所川原市の地元・料飲店組合が始動
青森県北西部、人口約5万人の五所川原市は津軽平野のほぼ中央に位置し、白神山地を源泉とした一級河川・岩木川が貫流する、自然に恵まれた田園都市です。また、津軽三味線の発祥地や文豪・太宰治の出生地としても知られ、巨大山車が練り歩く夏の祭り・立佞武多(たちねぷた)などの文化的な見どころが多く、観光面でも注目を集めています。
この市街地を盛り立てる飲食店が加盟する、五所川原料飲店組合では、主に環境保全・近年の不足問題から生じる影響の懸念から、2023年7月より「一升びん回収プロジェクト」を発足。料飲店組合主導のリターナブルびん回収の取り組みは全国的にも珍しく、地域に根ざした地道な活動から、着実な成果が挙げられています。今回は、五所川原料飲店組合の小野靖理事長に、プロジェクト構築の経緯と今後の展望についてお話を伺いました。
この市街地を盛り立てる飲食店が加盟する、五所川原料飲店組合では、主に環境保全・近年の不足問題から生じる影響の懸念から、2023年7月より「一升びん回収プロジェクト」を発足。料飲店組合主導のリターナブルびん回収の取り組みは全国的にも珍しく、地域に根ざした地道な活動から、着実な成果が挙げられています。今回は、五所川原料飲店組合の小野靖理事長に、プロジェクト構築の経緯と今後の展望についてお話を伺いました。
五所川原料飲店組合 理事長 小野 靖 氏
日本酒文化の継承と存続を目指す
「一升びん回収プロジェクト」
五所川原料飲店組合の設立は1969年。今年で55年目を迎え、現在は約70店舗が加盟しております。地域的な活動を通じて結束しつつ、常に町の活性化を目指してきました。
「一升びん回収プロジェクト」の始動は、組合員の日本酒居酒屋「ふくら」店主の豊島さんからの提案がきっかけでした。それは県内の酒造メーカーと取り引きする中で、一升びんが大きく不足している実情を知り、びん回収に組合が協力して手助けができないか、というもので、まずは酒造メーカーに直接リサーチに行く運びとなりました。
従来、この酒造メーカーでは一升びんの新びんが使用されていましたが、大手製びんメーカーが1工場を閉鎖したことが発端で、新びんの入手が困難となり、それが製造の妨げとなっていました。
この問題が長引くことは、今後の日本酒製造のコスト増や出荷数量の減少によって、日本酒の価格が高騰してしまう可能性を危惧しました。加えてコロナ渦の影響から、日本酒そのものの需要が減少していたこともあり、結果的に飲食業、またそれに関連する業界に影響を及ぼす危機感を抱きました。
この状況に直面して、組合では業界全体で情報共有・発信しながら協力し、乗り越えなければならない案件であると実感するに至り、「一升びん回収プロジェクト」を立ち上げました。
「一升びん回収プロジェクト」の始動は、組合員の日本酒居酒屋「ふくら」店主の豊島さんからの提案がきっかけでした。それは県内の酒造メーカーと取り引きする中で、一升びんが大きく不足している実情を知り、びん回収に組合が協力して手助けができないか、というもので、まずは酒造メーカーに直接リサーチに行く運びとなりました。
従来、この酒造メーカーでは一升びんの新びんが使用されていましたが、大手製びんメーカーが1工場を閉鎖したことが発端で、新びんの入手が困難となり、それが製造の妨げとなっていました。
この問題が長引くことは、今後の日本酒製造のコスト増や出荷数量の減少によって、日本酒の価格が高騰してしまう可能性を危惧しました。加えてコロナ渦の影響から、日本酒そのものの需要が減少していたこともあり、結果的に飲食業、またそれに関連する業界に影響を及ぼす危機感を抱きました。
この状況に直面して、組合では業界全体で情報共有・発信しながら協力し、乗り越えなければならない案件であると実感するに至り、「一升びん回収プロジェクト」を立ち上げました。
見直されるリターナブルびんの価値
地域的だからこそ着実に広がる資源循環
「一升びん回収プロジェクト」始動から、まずはポスターと配布資料を作成し、組合員(加盟店舗)に掲出を依頼したところ、全組合員から快く賛同してもらえました。これを見たお客さんの反応も概ね良好だったようで、来店客へのプロジェクト周知と同時に、自宅で出た一升びんのリユースを呼びかけるきっかけとなりました。その後、地元新聞(東奥日報)に記事にしていただいたこともあり、家庭で排出された一升びんが回収協力料飲店へ持ち込まれるケースも着実に増えてきています。
回収されているびんは、茶色・緑色の日本酒・焼酎が入っていた一升びん(丸正1800mlびん)、主に回収協力料飲店の店先に設置された専用の回収ボックスで収集されています。この「一升びん回収プロジェクト」を始めるまでは、行政で資源リサイクルとして収集されていましたが、リユース(洗浄して再利用)ではなく、リサイクル(細かく砕いて再加工)されていたようです。こうして集められたびんは、協力店である各酒販店で色分けをして保管され、酒造メーカーが酒販店に納品を行う際、受け渡しするシステムとなっています。
回収は組合員以外に酒販店にも依頼しており、協力先として7店舗が参加。合計9店舗で回収が行われています。この活動をはじめてから、1年が過ぎた現在までの回収量は約3,000本超となっており、回収された一升びんは、地元酒造メーカー2社で再使用・製品化されています。
回収は組合員以外に酒販店にも依頼しており、協力先として7店舗が参加。合計9店舗で回収が行われています。この活動をはじめてから、1年が過ぎた現在までの回収量は約3,000本超となっており、回収された一升びんは、地元酒造メーカー2社で再使用・製品化されています。
プロジェクト始動より約1年
今後の展望として
まこの「一升びん回収プロジェクト」の活動を通して、地元で収集したびんを地元の酒造メーカーが活用する地産地消の流れは、理想的な資源循環の形だと実感しています。
残念ながら、プロジェクトへの反響はまだ当県の他の組合などからはなく、この活動自体を知らない酒造メーカーがあるなど、情報共有の面での課題は大きく、回収量増加のためにも酒造組合の協力体制がほしいところです。またこれは希望としてですが、料飲店は営業と両立しながらの限られた時間での活動となるので、やはり収集は酒造メーカーや酒造組合が主体的に行うのが望ましいと考えています。今後もより良い活動を模索しつつ、循環型社会への推進を継続していこうと思っています。
残念ながら、プロジェクトへの反響はまだ当県の他の組合などからはなく、この活動自体を知らない酒造メーカーがあるなど、情報共有の面での課題は大きく、回収量増加のためにも酒造組合の協力体制がほしいところです。またこれは希望としてですが、料飲店は営業と両立しながらの限られた時間での活動となるので、やはり収集は酒造メーカーや酒造組合が主体的に行うのが望ましいと考えています。今後もより良い活動を模索しつつ、循環型社会への推進を継続していこうと思っています。