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びんリユース事例紹介

カタシモワイナリー

大阪の都心部から20kmほどの距離に位置する柏原市。緑の山々と美しい渓谷、豊かな川の流れなど、多彩な自然環境に恵まれ、その住みやすさからベッドタウンとしても優れた地域であり、漆喰の重厚な母屋や土蔵が並ぶ伝統的な古民家の集落も残っています。また、温暖な瀬戸内海式気候はブドウの栽培に適しており、ワイン醸造は大正時代から行われてきました。

西日本最古のワイナリーである「カタシモワイナリー」は、1914年創業。自社農園では有機肥料栽培に取り組み、運営する全農園が大阪府エコ農産圃場に認定されるなど、環境に配慮した経営を精力的に推進しています。今回は、その5代目の高井麻記子さんと、洗びんの取引業者・成尾屋の成尾秀夫専務にお話を伺いました。

カタシモワインフード株式会社 5代目 高井 麻記子 氏

創業当初より続くリターナブルびんの活用
さらなる商品企画を目指す

当社が使用している回収びんは、1.8Lと720mlの2種類です。1.8Lびんは創業早々から使用を開始しており、10年ほど前までは自社の機械で洗びん作業を行っていましたが、機械の更新と近年のラベルがきれいに取れにくくなった事情から、自社洗びんから外注洗びん(成尾屋への依頼)へとシフトしました。空きびんの回収は、取引先からの持ち込みが中心です。また、直営店の屋外にP箱を設置して、個人のお客様がいつでも排出できるようにしています。
King Selby レギュラー

1.8Lワイン「King Selby レギュラー」

直営店回収所

直営店の屋外に設置した回収所

カタシモワイナリーで使用した洗いびんの実績としては、コロナ前は1.8Lびんが年間で約12,000本でしたが、昨年はコロナ禍の影響により年間で7,640本となっています。納品先としてはホテルや飲食店など、主に業務用のものではありますが、コロナ前までの販売数量は伸びていました。消費者の方々のご理解は勿論、中身の品質維持さえしっかり保たれていれば必ず需要はありますし、また新たな展開もあり得ると実感しています。今後も継続して、回収びんの商品は考えていきたいです。

受け継がれる文化を美味に
多様な担い手でつくる「100年つむぐワイン」の誕生

100年つむぐワイン

2021年の「100年つむぐワイン」

720mlの回収びんは1年目の「100年つむぐワイン」で使用しました。このワインは大阪府アグリパートナー企業の農業体験・ボランティア分野の取り組みとして、柏原市の企業や福祉事業所などが、行政とも連携し、地元農家でのワイン用ぶどうの収穫作業・醸造に携わった活動によって、2021年に誕生しました。「つむぐ」という名称は、遠い過去から受け継がれている大阪の文化や産業を1本1本の糸と捉え、その一つである「ぶどうとワイン」を将来に向けて「みんな」で紡いでいきたい、という願いを込めています。
高井5代目

高井 麻記子 5代目

この「100年つむぐワイン」に回収びんを使用しようと思ったのは、受け継がれるものとしての面と、多様性を表現する上でシンパシーを感じたからです。使用する720mlびんは、当社が前年に販売して回収したものを中心に、独自で収集していますが、緑・白・フロストなど、さまざまな色を使用しています。また、びんについた小さなキズも、エコに貢献した証としての味わいがあって良いと思っています。地域資源を継承すべく、多様な担い手によってつくられたこのワインの顔として似合っていますし、私はとても気に入っています。しかしながら社内では、どこまでのキズやカスレなどが許容できるものなのか、その基準が分かりづらいという意見もありました。今のところ、社員には品質維持に関わる割れや欠けをチェックしてもらい、その後、最終的に私が確認して使用するびんを判断しています。今後はチェック項目をつくるなどして、品質と安全性を確保した上で効率化を検討していきたいです。
720mlびん

「100年つむぐワイン」に使用した720mlびん

現在、「100年つむぐワイン」は限定品として、主に活動に携わった方々にご購入いただいています。初年度は辛口の白ワイン、2年目はスパークリングワインと、毎年違うコンセプトで醸造しており、ご好評をいただいています。より多くの方に知っていただき、楽しんでいただける様、この活動を育てていきたいと思っています。

なお、2年目はスパークリングワインでしたので、二酸化炭素を多く含みびん内のガス圧高いため、スパークワイン専用の新びんを使っています。

株式会社 成尾屋 専務取締役 成尾 秀夫 氏

洗びん作業と回収についてびん
リユースの良さを伝えたい

成尾専務

成尾専務取締役(持っているのは「一升瓶回収拠点促進招布」)

当社の洗びん作業は、集荷されたびんを洗びん機に並べ、最高80度ほどの苛性ソーダ洗浄水を使って洗浄・殺菌を行います。この洗びん機は最大で1時間当たり1,200本が洗浄可能となっていますが、びんの保全と作業精度を配慮して、700〜800本/時間で稼働しています。その後、欠けや傷が生じやすい口・肩・底部を中心に、1本1本丁寧に目視で検査しています。

回収に関しては、主に酒販店や酒造メーカーの協力をいただき行っています。大阪硝子壜問屋協同組合が主体となって酒販店での1.8Lびんの回収拠点マップをWebサイトで公開しており、その協力店舗にはリターナブルびん回収拠点であることを示す「招布(まねぎ)」を配布して店頭に掲げてもらい、地域に呼びかけています。また、リユースびんマークを作成し、びんリユース推進全国協議会に公認されました。酒造メーカーにはこれを1.8Lびんのバックラベルなどに印字していただき、環境に優しいリターナルびんが使用されていることを消費者にアピールしています。

麻記子さんは、実際に自社での洗びん経験があり、びんリユースにもご理解があるので、さまざまな企画で取引させていただいています。「100年つむぐワイン」での回収びん使用も高井さんならではの発想ですし、循環型社会に向かう現代に合った素晴らしい企画だと思います。しかし一方で、近年の通販需要などから、過度な見た目の商品価値に偏ってしてしまい、びんリユースを認識していない酒造メーカーがあるのも事実です。実際のところ、成尾屋では大阪近郊のみの回収では十分ではないため、九州や関東からも1.8Lびんの空きびんを仕入れ、洗びんしています。我々としては今後も精度の高い仕事を継続し、びんリユースの良さを知っていただくことで、より多くのエシカルな(環境や社会に優しい)消費者を増やしていくことが重要だと思っています

カタシモワインフード株式会社 5代目 高井 麻記子 氏

リサイクルは当たり前なこと
地域の歴史的・文化的資源を守る

洗びんを成尾屋さんにお願いするようになった理由としても触れましたが、最近のラベルは紙にコーティングが施されており、素材が紙だけではないため親水性がありません。糊もでんぷん糊でないなど、剥がれにくいものが非常に多くなりました。一升びんは共用のリターナブルびんですので、一升びんをリユースする上で、一升びんを利用している酒造メーカーには改善してほしいです。

私自身、自社で洗びんをしていたのは、とても良い経験だったと思います。展示会などで使った1升びんを、エプロンと長手袋をつけて、長靴履いて、洗って、扇風機で入念に乾かしてからキズを1本1本チェックして、リトマス試験紙も使い、匂いや音でも確認する。とても手間のかかる作業です。だからこそびんリユースのありがたさがわかるし、積極的に回収びんを活用していきたいと思います。現代において、リサイクルは当たり前なこと。さらなる環境保全にも目を向けながら、同質化することなく、ぶどうとワインで育まれてきたこの地域の独自性を守っていきたいと思います。
高井5代目
カタシモワイナリー外観