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検討会・シンポジウム

びんリユースシステムLCA調査・分析報告発表会

日 時 2021年3月5日(金)15:00〜17:30
場 所 オンライン形式及びガラスびん3R促進協議会会議室
主 催 ガラスびん3R促進協議会




会場風景
会場風景

開催内容

開会挨拶
ガラスびん3R促進協議会 会長 石塚 久継 氏

基調講演
東京大学名誉教授 安井 至 氏

調査・分析報告
京都大学環境安全保健機構付属環境科学センター 助教 矢野 順也 氏

講演・提言
京都大学大学院地球環境学堂 准教授 浅利 美鈴 氏

閉会挨拶
ガラスびん3R促進協議会 副会長 長谷川 雅之 氏


開会挨拶

ガラスびん3R促進協議会会長 石塚 久継 氏

  • 地球温暖化の中で、日本は2050年には温室効果ガス実質ゼロに向けての動きが出て来ている。ガラスびんは製造時にはCO2を排出するが、リユースを進めることで多くのCO2排出を削減することが可能である。
  • 協議会の今年度の事業として、びんリユースシステムのCO2削減に対する優位性を見える化しようと、リユースに関するLCAの調査分析を京都大学の浅利先生の研究室にお願いした。
  • 現在報告書の作成中であるが、それに先立ち、安井先生から基調講演、矢野先生からびんリユースシステムのLCA調査・分析(速報値)のご報告、浅利先生からびんリユースシステムの可能性と期待のご講演をしていただくことにした。皆さんにとって、有意義な会となるよう期待している。

基調講演

2050年のために何を準備すべきか 環境負荷とその定量化の方法論=LCA

東京大学名誉教授 安井 至 氏

安井氏

  • LCAは世界的には第一次石油ショックの時に始まった。いかにして燃料の使用量を少なくすることができるかという方法論が必要となったのがきっかけであり、極めて現実的な背景を持った手法である。LCAは本来、環境負荷を定量的に測定するものであるが、現在、LCAの評価対象はCO2の発生量ということが最大の眼目となっている。
  • そもそも環境負荷とは何か?
    環境基本法によれば、『人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう』。
    具体的には、人的に発生するもの「廃棄物、公害、土地開発、干拓、戦争、人口増加など」と、自然に派生するもの「気象、地震、火山など」がある。最近は廃棄物の環境負荷が大きくなっている。
  • 歴史的にみると、廃棄物と公害はほぼ同時期に発生し、その後、土地開発が起こった。人的環境負荷は多くのケースが、人間生活の利便性を高める行動の「副作用」として発生する。LCAは、持続型の人間活動をどのようにやるかということを示すシステムということで便利に使われてきている。
  • 今はCO2をいかに減らすかが最大のテーマである。本来植物が吸収してくれるものだが、今後人口が増えると、森林がなくなる可能性が高い。その場合CO2をどのように吸収するかが問題になってくる。化石燃料をずっと使ってきているが、枯渇して使えなくなってくる。その時に何をやるかをそろそろ考えないといけない。ターニングポイントは2050年で、その時化石燃料は使っていないだろう。
  • 炭素は生命にとって必須な元素である。動物にとっては、炭素分を含む食物を食べ、エネルギー源となり、また廃棄物であるCO2が「肺から排出することが容易な」常温・常圧で気体の物質であるため、炭素は極めて便利な元素だった。生命は地球上の元素をうまく使っている。
  • しかしながら、CO2は地球環境にとってはある意味、猛毒性であるといえる。CO2が増えると大気の温度が上昇し、地球の健康に悪影響(=地球の体温を高める効果)を及ぼす温室効果ガスとなる。
  • 基調講演図1

  • 世界では、2050年にCO2ゼロを宣言しない国はアウトとなる状況。一昨年、国連はCO2ゼロを宣言した国だけを会議のスピーカーにするという方針を固めた。当時日本は宣言していなかったので、発言権を与えられなかった。菅首相は、2020年秋の臨時国会での施政方針演説で、2050年にはCO2ゼロにすると宣言をした。ようやく世界のスタンダードになった。しかし、具体的に何をやるのかはほぼ未発表のままである。
  • LCA=Life Cycle Assessment の定義は、もともと製品がどのようなプロセスで製造されたか、そのときの環境負荷の全体像がどのようなものであったかをできるだけ正確に評価しようとする方法論。本来、全負荷を対象にすべきだが、最近は環境汚染物質についてはCO2の解析のみになってきている
  • 産業界でのCO2ゼロ宣言のキーワードは、「排出ゼロor脱炭素」「CO2処理方法」「新燃料」「電動化」「水素利用」などである。
  • 最近では、ユナイテッド航空がCO2排出ゼロのために電動旅客機に1,000億円を投資したと報じられた。
  • 米国の石油販売業者は、ガソリンおよび軽油に関して、体積比で10.9%の植物バイオ燃料を添加することが義務化されている。日本もそうならざるを得ないだろう。
  • ホンダは世界の脱炭素の流れが加速するなか、電気自動車などの事業展開で出遅れた。日本は電気自動車の分野において世界で一番遅れた国になった。
  • 最近、世界ではCO2を捕まえて地下に貯める技術、CCS(=回収地下貯留)の実用化が加速している。このためには地下に貯め込む構造物が必要。昔の油田が一番良い。しかしながら日本にはない。方法としては、いったん大気中に出して、空中からDAC(Direct Air Capture)でとるというもの。これにはコストがかかる。地下に貯留する場所がない日本国がすべきことは、南米、あるいはサウジアラビアあたりの砂漠を買うことしかない。
  • 原発には抵抗感があるが、小さなモジュールを組み立てるだけでできるという原発もできるようになった。個人的には、Small Modular Reactorを推奨する。
  • 2021年2月には、第6期科学技術・イノベーション基本計画の素案が発表された。重点分野は、DX(digital transformation)と脱炭素社会で、日本全体の目標となる。
  • 同じく、2021年2月、放射線で発電する寿命100年のダイヤモンド電池の施策が発表された。これは放射性物質から出る電子を受けて電力を生むダイヤモンドを開発するというもの。CO2ゼロの新しいエネルギーをどうやってつくるかが研究者レベルでは大注目されている。
  • 東芝とGEが洋上風力で提携をしたと発表された。政府は現在約2万キロワットの発電能力に留まる洋上風力を、2030年までに、1,000万kWまで拡大させる方針。しかしながら、日本は台風が多く、風車が倒れることも多いため、難しい。他の選択肢を考えると原子力になる。
  • 中西経団連会長は、「脱炭素優先」を表明。経団連の主張は以下である。
    • 2050年炭素排出実質ゼロに協力
    • 大容量蓄電池と安価な水素供給
    • CO2の回収・有効利用
    • 電化率向上
    • 新型の原子炉開発などを目指す
  • 脱炭素の重要なカギの一つは原発。経済界は「国が前面に!」と主張。しかしそれでうまくいくのか? そうでなくて自分で覚悟決めてやっていただくのがいいと思う。
  • 今後水素施設は重要になる。伊藤忠はフランスの大手のエア・リキードとともに、2020年半ばに、世界最大級液化水素製造プラントを中部地方に設置。
  • 日本の水素価格は欧州の4倍となっている。水素は天然ガスから作っているため、天然ガスが自国にある国は安い。日本では難しいが、もっと積極的に進めるべき。
  • 欧州は炭素税導入で先行しているが、日本では産業界から大反対されているので止まっている。しかし止めてはだめだと思う。なぜなら、それを超えるための技術をやろうという気にならないからだ。日本が現状維持をしようとしているのは将来にとってよくないと見ている。炭素税を覚悟しないと将来はない。現在日本の炭素税はゼロである。
  • その中でも日本も副生水素の製造に取り組もうとしている。経済産業省は、2030年に水素価格を現状の1/3にすることを目標としている。可能性はある。資源のない国、日本がやるべきことは将来のエネルギーを何にするかを考えることである。
  • 2020年10月の日経新聞1面のトップに、米国の株式市場では「脱炭素」に熱心な企業の評価が高まっていると報じられた。まもなく日本もそうなると思われる。それを意識していただくしかない。世界で比べると、日本は主要企業のCO2排出量削減で見劣りしている。これでは株価は上がらない。
  • 基調講演図2

  • CO2発生量の定量化手法がLCAよりほかに方法がないので、引き続きLCAを継承していく。現時点で、LCAはISO14040によって国際規格となっている。株価を上げるなら、LCAでCO2を出していないことをしっかり示していける企業でないと、今後生き延びることはできない。

調査・分析報告

びんリユースシステムのライフサイクル分析

京都大学環境安全保健機構付属環境科学センター 助教 矢野 順也 氏

矢野氏

  • ガラスびんは古くから市民に親しまれてきたが、生産量はプラスチックの台頭で減少傾向にシフトしていった。一方、プラスチック問題の関心の高まりや、資源循環共生圏の実現に向けて、再度ガラスびんの持つ環境的価値を見直す機会になると考えている。
  • ガラスびんによって温室効果ガスがどのくらい削減されるのかなど研究は歴史的にも多くある。古くは2001年から詳細に研究されているものもあり、その後も解析はされてきている。近年の消費動向やびん回収率等を踏まえたデータの更新を行うことで、さらなる地域循環シナリオ等への展開への基礎情報となるだろう。
  • LCA調査では機能単位を置いて比較可能な状態にする。今回の分析、「対象ガラスびん製品を用いた年間国内消費量(内容量)分の供給」。これは、機能を満たすために必要なガラスびんの量を計算し、処理・リサイクル・リユースする時の効果を評価するものである。国内消費量は2019年実績。対象ガラスびんは、一升びん 950g、ビールびん(中びん)460g、丸正900mlびん450gの3種で解析。出荷本数は、一升びん 1億1千100万トン、ビールびんはその4倍などとなっている。解析結果は1本当たりに最後割り戻す。注意点としては、キャップやラベルなどの付属物、外装容器は評価対象外としていること。評価指標は温室効果ガス(GHG)CO2である。
  • 評価シナリオについては、対象ガラスびんごとに以下の3つのシナリオを設定した。
    • S1ワンウェイ(リサイクルなし)
      回収後のびんはそのまま最終処分(埋立)。
    • S2ワンウェイ(リサイクルあり)
      回収し、選別後にカレット工場等で再生原料等に加工。
      ガラスびん用途:路盤材用途=8:2の割合。
    • S3リユース
      回収後は洗びん工程を経てリユース。従って新しいびんを作る量が減ってくる。
  • LCA時には何を代替するか、リユース効果をどう評価するかが結果の解釈に影響する。今回の解析ではリサイクルに関しては、ガラスびんは新びん製造用の購入カレット(再生原料)への代替。路盤材利用されるものについては、砕石代替で評価している。リユースについては、新びんを作る量が減るという評価をしている。
  • システム境界は、新びん製造では新びんを作り、消費され、その後回収されて選別除去工程を経てカレット(再生原料)となるシナリオ。S2ワンウェイ(リサイクルあり)のシナリオはカレット(再生原料)に加工された後、びん用の原料として新びん製造に入る、その分バージン原料が減る。S3リユースのシナリオは回収後洗びん工程を経て再利用される。ここでは再利用された分、新びん製造が減り、原料使用量が減る。それぞれの工程で歩留まりがあり、未回収もある。未回収分は埋め立てられるとし、資源として回収されれば、カレット製造に回り、一部リサイクルシナリオに入ってくるものもある。最終処分や排水処理なども加味しての評価となっている。なお、充填作業と消費の部分はどのシナリオも共通のため対象外としている。
  • 調査・分析報告図1

  • 今回のびん回収率とリユースシナリオの再使用設定条件は、一升びんが74.8%、ビールびんが78.3%、丸正びん78.3%という直近の実績を使っている。一升びんの再使用回数は、基本的に5回。ビールびんはもっと多いということで25回に設定している。丸正びんは仮定であるが5回の設定にしている。
  • びんの収集距離も結果に影響する。リユースの場合、商圏の初期設定を50kmにしている。その他の輸送距離は100km弱で設定。先行の研究成果も参考している。
  • 基本的には茶色びん系統のパラメータを使用。S3リユースのシナリオで洗びんの歩留まりは86.7%。新びん製造では、珪砂、ソーダ灰の輸入割合はそれぞれ50%、70%。カレット利用率と省エネ効果は、カレット利用率が10%増加するとエネルギー消費2.5%削減されると仮定して解析している。
  • 具体的なカレット割合は、S2ワンウェイ(リサイクルあり)とS3リユースの場合はそれぞれ47.2%。1割ほど消費エネルギー削減されるという想定での解析。
  • 新びんの製造量では、S1ワンウェイ(リサイクルなし)とS2ワンウェイ(リサイクルあり)は同量。S3リユースは回収びんが6割から7割弱となり、生産量を大きく減らすことができる。
  • 一升びんの例。S2ワンウェイ(リサイクルあり)はS1ワンウェイ(リサイクルなし)に比べGHGは31%削減でき、リサイクルでも一定の削減効果はある。一方5回のリユースでは、S1ワンウェイ(リサイクルなし)と比べて80%の削減となり、S2ワンウェイ(リサイクルあり)と比べると1/3程度になる。
  • 調査・分析報告図2

  • S2ワンウェイ(リサイクルあり)では原料採取、新びん製造の削減効果が大きい。新びん製造の負荷は25%削減しているが、これは、カレット利用率増加による省エネ効果が約12%、天然資源投入量削減による石灰石・ソーダ灰由来CO2排出削減が約1割あって、合わせて25%減となる。
  • S3リユースのシナリオに関しては、新びんを作る量が減るというのが一番大きく、それにともなって必要原料を採掘等の負荷も減る。さらに削減量を増やすには洗びん工程とびん回収の効率化が効いてくる。
  • 再使用回数5回で、どのびんも7〜8割の削減ができる。ビールびんのように再使用25回までできると9割以上削減可能となる。
  • 調査・分析報告図3

  • 一升びんの場合、再使用回数5回のシナリオでリサイクルありのワンウェイと比べると3割程度になる。ある程度まで使用回数が増えると、削減効果は減るが、2回でも半減するので、少しでも使用を繰り返すのが大事。
  • 調査・分析報告図4

  • 回収率が90%まで向上すると、3回の使用で、デフォルトのリユースシナリオ(びん回収率74.8%、再使用回数5回)と同程度のGHG排出量まで低減できる。一方、びん回収率が60%まで悪化すると9回再使用しなければデフォルトと同程度にはならない。70〜90%では15回以上の再使用回数では差はあまり出てこない。だいたい、再使用回数1回増えると、びん回収率10%と同程度の効果と言える。
  • 輸送距離との関係では、30kmと500kmでは1.7倍の開きが出る。300kmではびん回収の排出量は洗びん工程の倍になり、100kmくらいで同じくらいになる。
  • 調査・分析報告図5

  • 温室効果ガス削減の観点から、ガラスびんのリサイクル・リユースは有効。リサイクルなしと比べると、リサイクルすることによって3割程度のGHG削減効果がある。リサイクル自体も意義があるが、今後さらに削減するとすれば、リユースを想定することになる。リユースすることができれば、リサイクルなしと比べ、大幅に削減が期待できる。
  • リユースのライフサイクルGHGの内訳では洗びん工程が2割弱程度、びん回収工程1割と構成比が大きい。再使用回数を1回増やすのと、びん回収率を10%改善するのと効果は概ね同程度であり、どちらが効率的かは結論しがたい。
  • 解析上の課題。
    • 回収びんのリサイクル、リユースが支配的なプロセスであるが、未回収びんの処理・リサイクル方法の設定によっても結果は影響を受けると考えられる。
    • キャップやラベル、収集運搬に使用する外装容器由来の負荷は評価できていない点に留意が必要。
    • 今回紹介したびん回収率、再使用回数、びん回収距離などの感度が高いパラメータの感度分析を進め、引き続き精緻化を図る必要がある。
    • その他。今回、一升びん、ビールびん、丸正びんというリユースの優等生を取り上げているが、そのほかのびんもリユースできるようになれば、ガラスびん業界全体で温室効果ガスはさらに減らせるのではないか。
      対象びんの拡大のためには地域内で小さく循環するモデルを考案することがあり得るのではないかと感じた。

講演・提言

びんの今と未来について考える

京都大学大学院地球環境学堂 准教授 浅利美鈴 氏

浅利氏

  • ごみ調査の研究をしている。ごみ研究、食品ロス、プラスチックごみ、有害危険物等に長く注目してきたが、3.11の災害廃棄物も最近のテーマとなっている。
  • 京都の家庭ごみ細組成調査(100年間のごみの量の推移)では、第二次世界大戦中は、データが残っていないこともあるが、ほぼ、ごみゼロだった。その後10数年で戦前レベルに。前の東京オリンピックごろから大量生産、大量消費、大量廃棄の時代に移った。同時にプラスチックが台頭してきて、びんが減っていった。ごみ発生量は2000年がピーク。京都は半減を目指し、昨年達成。そこからさらに減らそうというフェーズに入ってきている。その中でごみを細かく分類して、分析した。
  • 家庭ごみの内訳を容積で比較すると50%近くが容器包材で、かなりの部分プラスチックである。昨年レジ袋が有料化義務化になる前は5〜6%がレジ袋だったが、現在(有料化後)は半減しているとみられる。
  • 昨年7月の有料化義務化からレジ袋をもらわない人は70%以上になっている。予想よりも参加率は高い。次は何?と考える時、ペットボトルをガラスびんに代替することもあるのではないかと注目している。
  • プラスチックごみで増えているものに、紙おむつがある。肝となる吸収材がプラスチック。高齢化で大人用も増えている。
  • 2年前の夏にプラスチック資源循環戦略が出された。基本原則は、「3R+Renewable」。そこで世界基準に合った意欲的なマイルストーンが出された。ガラスというキーワードが出てくるわけではないが代替品の有力な候補として考えることができる。プラスチックのリユースは難しいので、改めてリユースの仕組みを考え直す方向性が出ている。最近小学校などでもびん牛乳に戻したいという声も出ている。いろんな可能性があるのではと思っている。
  • プラスチック問題の論点。最初に火がついたのは、ウミガメの鼻にストローが刺さっている情景だった。プラスチックが水域生態系に影響を及ぼしていることが注目され、加えてマイクロプラスチックの問題も大きく言われている。それ以前ずっと問題にしてきたのは、原料調達と化石燃料を利用し続けていいのか等、廃棄物や地球温暖化から見た問題であった。プラごみの輸出入規制など、国際循環の問題もあり、真剣に国内のリサイクルを考えなければいけない状況となっている。国の施策と消費者の協力により正しい購買行動をとっていくべき。その中でガラスびんは魅力的である。
  • 学生との活動を紹介したい。2019年6月に、京大で学生とともに「プラスチックについて〜京大プラ・イド宣言〜」を開始した。プラ・イドは、プラスチックという意味と、プラスチックへの依存度をアイデンティフィケーションするという意味を含めた単語。学内でプラスチックを減らそうということからスタートした。「エコ〜るど京大」という学生さんたちとの活動の輪で取り組んでいる。
    京大プラ・イド宣言は、  
    • 考え行動する宣言
    • 「かばんの中プラ」キャンペーン
    • 京都大学プラ・イドチャートの提案
    • プラ・イド革命(できることからアクション)
  • 幅広いプラスチック製品に目を向ける手段として「かばんの中プラ」キャンペーンを考えた。まずはかばんの中にどれだけのプラスチックが入っているかの気付きから、改めてプラスチックのあり方を考えていこうというキャンペーン。
  • 講演・提言図1

  • 学生20人を調査した結果、少ない人では13個から多い人では248個のプラスチックが出てきた。合計で1,652個。平均すると1人約80個になる。この活動を小中学校や企業でもやっている。単純に減らすことが目的ではなく、いろんなところにいろんな形でプラスチックがあることを知ってもらう入り口だと考えている。
  • プラ・イドチャートは、どんなものをどう使うかを頭の中で整理するもの。バージョン1では、左右は「絶対にいる」ものか、「いらない」ものか。上下に「避けられる」ものか、「避けにくい」ものかを分類して、個人の主観・認識レベルを可視化する。「いらないし、避けられる」ものは、いますぐ削減対象にできる。「どうしてもいるし、避けられない」ものは、将来的にどうすべきかを考えていくべき。消費者の気持ちを左(いる)から右(いらない)に持って行くことも重要。そのための個人の工夫や意識改革が重要。また下(避けにくい)から上(避けられる)に代替品を作ることなど、企業の研究や技術開発に関する努力も必要で、できるだけ右上(いらない・避けられる)に寄せていきたい。
  • 講演・提言図2

  • 「みんなのプラ・イド革命」共創会議 〜共創会議&プラットフォーム構築へ〜。これは、マイルストーン達成に向けて、プラスチックとの持続可能なあり方について、多世代、他分野から多様なステークホルダーが集い、情報共有を行い、話し合っていくもの。コロナ禍においても、オンラインでいろんな方が集まってくれている。昨年夏に第1回会議を行い、300人以上が集まった。5年計画で動かしていきたい。その中では代替品の検討が重要。ぜひ皆さま方とも協働できるとありがたい。
  • 最近の活動を紹介する。Z世代、小学生、地域の方とSDGsでつながる活動を、学生と一緒にエコ〜るど京大としてやっている。環境問題への注目度が下がっていた時期、2013年に、再度火をつけたいと学生を巻き込んでスタートし、いろんな活動を年間通じて行っている。そのひとつが、着物のリユース企画「Kistory」。タンスの肥やしになっている着物が日本には4億枚あるといわれている。思い出が詰まった着物を大切に次世代に受け継ごうという活動。主旨を伝えると、全国からものすごい数の着物が集まってきた。イベントを通じて、新しく着物を始めたい若い世代の人たちにつないでいる。
  • 大人版には「京都超SDGsコンソーシアム」という活動をしている。京都大学、京都市、企業と一緒にSDGs活動しましょうと、2年前から始めた。現在6から7社が参加してくれている。
  • そのひとつで、京都の中山間地域で北山杉を継承している京北の里山を残そうという活動を行っている。住民の方々とともに、未来について語り、学び、実践する場所を創ろうとしている。
  • そのキーワードはSDGs。これは2030年までに達成すべき17のゴールである。
    地域の問題が、地球の環境問題に複雑に絡んできた。それは地球や人間の健康にも影響を及ぼし、さらには地球の紛争や難民や疫病にも影響している。コロナとも重複してくる。一番の課題は、地球問題で、将来世代、他生物、途上国の人たちにツケが行きやすいということである。これこそSDGsの概念。ごみから見てきたが、総合的に解決するためには、17の課題に目配りする必要がある。ひとつの課題を解決しても全体の問題解決にはつながらない。それを体現してくれて、チャンスをくれているのがSDGsであると思う。
  • 国際規模でみると、日本のSDGsの評価は低い。ほとんど達成されていない。達成できているのは、4の教育、9の産業と技術革新、16の平和と公正。今後毎年発表されるSDGsの評価も指標として受け入れるべき。
  • 日本国内で2019年、電通がSDGs生活調査を行ったところ、SDGsの認知率は16%。内容も知っているのはわずか4%。一番認知率が高いのが中学生で、29.6%、約3割。平均の倍である。中学生の学習指導要領にも出ており、受験にも出て来るので認知率が高い。なお、最新の調査結果では認知率は約4割にあがってきた。
  • 学生たちとSDGsに何から取り組もうと考えていたが、最初は難しかったが、とにかく学生らしく何かアクションしようということになった。そこで1日1「SDGs」のタスクを課して取り組み始めた。その中から自分たちでできることをまとめ、新入生全員に配布したり、イベント化して発信したり、いろんな先生から話を聞いたり、「今日も明日もSDGs」という17のオンライン番組を朝のラジオ体操の後に配信したりなどの活動をしている。
  • 京都市内の小学校ではレクチャーをしたり、SDGsノートによる指導を行ったりしている。ノートにはひとつずつゴールの解説をし、そこに自由に書ける欄を作り、1か月間何か気付いたこと書き込んでとお願いして、1か月後に集まってグループワークで埋まり具合を見たりしている。そうすることで小学生は17のゴールを1か月でしっかり理解していた。
  • SDGsの視点で自分の住んでいる地域を回り、持続させたいものを見つけたり、逆に持続のための障害になっているものを見つけたりして、SDGsマップを作った。これを元に地域に提案し、採用されたものもある。社会問題に目を向けるためのきっかけとしてマップが便利に働いている。
  • SDGs教育は社会課題を俯瞰的に捉える方法として、世界中の共通語になっていると感じる。海外ともSDGsというキーワードで交流企画を立てるなど、若い世代に世界に通じるヒントをくれる考え方でもある。
  • 講演・提言図3

  • 京北地域では、小中一貫校を作るなど、行政も力を入れている。地域の中に入っていくことが重要なため、ワークショップ運動や、小中学校でSDGs教育をしたり、お茶会をしたりなどいろんなことをしている。
  • その中で地域も揺れている。京北は森林が9割以上。住民の半分以上が森林を所有しているが、資産価値を認めている人はほぼいない。継承のために所有しているが今後どうするかが大きな難しい課題となっている。
  • 最終的には地域循環共生圏を展開したい。1次産業+2次産業+サービス産業(3次産業)=6次産業から入って、循環や教育(4次産業)に取り組まなければならないと思っている。そこでガラスびんは重要な位置を占める。京北でも資源をつないで、10次産業につなげていこうと思っている。
  • ガラスびんは親和性が高い。日本中に中山間地域が多数存在しており、コロナの中でも新たな価値を見出さなければならない。この中でも新たなガラスびんの未来を見つけていくことができるのではないか。日本の里山都市が成熟していく先に、ガラスびんの未来があるのではないかと思っている。
  • 講演・提言図4
    イラスト:「ハイムーン工房」のホームページより

閉会挨拶

ガラスびん3R促進協議会 副会長 長谷川 雅之 氏

  • ガラスびんの出荷量は減少し続けている。少し前は、100万トンを切ることはないだろうと言っていたが、2年前に100万トンを切って、昨年はコロナ禍ということもあり、90万トンを切った。
  • ガラスびんは、3Rに対応できる、他素材にはないリユースという大きな利点を持った容器であることを今日の発表で改めて感じた。今後もガラスびんの優れた機能と循環安定性を提案するとともに、持続的利用を推進することで、環境負荷の軽減やSDGsに貢献していきたい。引き続きご協力を賜りたい。