第14回 我が国におけるびんリユースシステムの在り方に関する検討会
開催日時 | 2016年3月24日(木) 10:00〜12:00 |
開催場所 | 大手町サンスカイルーム 27階 D室 (東京都千代田区大手町2-6-1 朝日生命大手町ビル) |
検討会 会場
第14回我が国におけるびんリユースシステムの在り方に関する検討会が開催され、下記の報告と議論が行われました。
(1)平成27年度びんリユースシステム構築に向けた実証事業の成果報告
(2)平成27年度の調査・検討事項の報告
(3)検討会WGの設置と検討結果の報告
(4)今後のびんリユース推進に向けた取り組みについての議論
検討会の内容
(1)平成27年度びんリユースシステム構築に向けた実証事業の成果報告
1. 関東甲信越びんリユース推進協議会の取り組み
3年目を迎えた「山梨県ワインびんリユースの取り組み」について、平成27年度の成果報告が行われた。
平成26年度の実証(トライアル)においてオープン市場における課題の多さが浮き彫りになったことから、平成27年度はクローズ市場での取り組みが優先して進められた。@ワイナリーでの生産 A卸・小売の流通 B旅館・ホテルの回収 の3つにフローを分解。県内ワイナリーで使用されているびん種の調査や、ワイナリーへのヒアリング、卸流通事業者へのヒアリング、山梨県旅館生活衛生同業組合の協力のもと傘下の旅館・ホテルにおけるアンケート調査などを実施した。ワインびんの現状を把握するとともに、課題解決に向けた方策を検討した。
主な課題としては、「ワイナリーの協力を得るにはどうしたらいいのか」、そのためにも重要となる「消費者の意識向上(リユースびんの認知)」、また「いかにしてまとまった数を回収するか」「統一びんの使用について」「地域全体の取り組みとのマッチングの必要性」などが挙げられている。
将来のオープン市場における取り組みを見据えながら、今後はクローズドシステムを確実に構築し、安定的にびんを供給できるようにするところからワインびんリユースを膨らませていこうと計画している。
2. NPO 団体World Seed の取り組み
平成24年度から奈良県内を中心に進められてきた、地方公共団体におけるびんリユース導入の取り組み。平成26年度からは、以前よりリユースびんの活用方策を検討していた大規模地方公共団体である兵庫県神戸市と連携し、導入方策の検討を行っている。その成果報告が行われた。
平成26年度には前段階として意識調査と試験利用を実施、平成27年度には、@安定的供給と確実な回収の「びんリユースシステムの構築」 A実際にびんリユースを導入した際の「環境負荷削減効果の試算」 B市職員に対する「2R研修セミナーの開催」を実施した。
特に@に関しては、神戸市は芦屋東灘酒販協同組合と「神戸市におけるリターナブルびん入り飲料の利用促進に関する協定書」を締結。地方公共団体におけるびんリユース導入においては、リユースびん入り飲料の提供と空きびん回収に対応できる地域酒販店との連携が重要であり、この協定はその先進的な事例である。
またBに関しては、2R研修セミナー開催の後に実施したアンケート調査において、前年度の意識調査と比較して2Rに関する意識が向上しているという結果が得られた。
本年度には神戸市でのびんリユース導入を開始し、これを発信していくことで、全国の地方公共団体においても導入が加速することが望まれる。
(2)平成27年度の調査・検討事項の報告
1. 市町村におけるびんリユースの取り組み
平成26年度は全市区町村を対象にリユースびんの収集状況を調査しており、リユースびんの分別収集をしている市町村は全体の10.4%、分別収集をしていないうちリユースびんの抜取りを行っている市町村は26.7%あった。平成27年度は、リユースびんの抜取りを行っている市区町村を対象に調査を実施した。
調査の結果、抜取りを実施する市区町村が減少していく可能性が示唆された。回答のあった市区町村のうち、抜取りの中止を検討している市区町村が3件、また昨年度は実施していたが今年度は中止している市区町村が2件あった。現時点では全体の数パーセントにすぎないが、中止検討の理由のひとつに挙げられている「ケース不足」が直近3年間で問題になったことのある市区町村は22件あり、今後中止の検討に至る可能性もある。
また抜取り対象の量や種類を拡大することについて「ぜひやりたい」「条件次第」との回答があわせて72%あった。現在対象としているびんの抜取りの徹底状況については「ほぼ全てを抜取りできている」との回答が74%あったこと、対象とするびんの種類については1種類のみ〜10種類以上までと差が見られることから、今後対象種類の拡大を検討していく余地があると考えられる。
<関連資料>
2. 消費者意識調査
1389人の消費者を対象としたインターネットモニターアンケートを実施。リユースびんの環境面のメリット・リユースびんを見分けるマークに関する情報を伝えることによって、リユースびんに対する関心や利用意向がどのように変化するかを調査した。
“ガラスびんは環境によい”という情報を消費者に提示すると、提示前と比べて「びんに関する情報に触れる機会」「びん入り商品を探す行動」があったとの回答が増加。ガラスびんに対する関心度が高まり、具体的な行動に繋がった可能性が認められる。
今後のリユースびん入り商品購入の意思については情報開示前後で大きな変化はなかったが、「欲しい商品がリユースびん入りで販売されること」「ほかの容器より安くなること」を購入の条件とする回答が増加。また、今後リユースびんを購入しない理由として「洗うのが手間だから」や「衛生的ではない気がするから」が大きく減少しており、環境にやさしいことへの理解が進んでいる一方、「欲しい商品がないから」「高いから」という回答は大きく増加した。環境にやさしいとの認識を持つことで、びん入り商品を選択的に購入する層が増える可能性があること、また購入してもらうにはリユースびん入り商品のラインナップを充実させる必要があることが分かる。
また、リユースマークの付いている商品を実際に見たことのある回答者のうち、「マークがついていることでリユースびんであることが分りやすくなった」との回答は4割に満たなかった。現行のマークでは充分でない可能性があり、リユースびんの判別をより容易にする手段の検討も必要であると考えられる。
<関連資料>
(3)検討会WGの設置と検討結果の報告
1. 検討会WG の設置について
環境省では平成22年度より「我が国におけるびんリユースシステムの在り方に関する検討会」を開催し、検討会取りまとめをもとに各種支援・事業を進めている。これまでの取組み状況を再整理・点検し、今後の取り組み方針を改めて検討するため、平成27年度事業において下記2つのWGを立ち上げ、今後のびんリユース推進に向けたテーマ別の検討を行った。
2. びんリユースシステムの在り方に関する検討WG
各地域で進展しているびんリユース推進のための取り組みを全国的に拡大していくため、消費者に対して分かりやすい情報発信をし、理解・支持・協力を得ていく必要がある。またそのためにも、市町村での効率的なリユースびん回収のための方策を具体的に検討することが重要である。以上の背景より、以下の論点についての検討が行われた。
- 運搬・選別の効率化、消費者認知度の向上につながるリユースびんの規格の検討
- 市町村におけるリユースびん回収の推進について
- 宅配・通信販売等におけるびんリユース推進について
3. びんリユースを中心とした2Rライフスタイル検討WG
ガラスびんのリユース促進は、ライフスタイルの中に位置づけ推進していくことが望ましい。消費者にガラスびんそのものの魅力を知ってもらい利用促進を図ること、その上で、環境負荷低減につながる場合にはリユースを促進していくことが求められる。びんリユースを中心とした2Rライフスタイルの定着を最終的な目標として、以下の論点についての検討が行われた。
- ガラスびん、ガラスびんリユースを取り巻く現況について
- ガラスびん、ガラスびんリユース推進に向けた消費者への情報発信方策について
◎ 両WGの検討結果報告についての主なご意見
- リユースびんの規格統一に関して「既存のリユースびんの普及支援(案1)」「既存のリユースびんへの認定・認証マークの付与(案2)」「新たな規格統一びんの作成(案3)」の3つが挙げられているが、どれがより望ましいのか、その評価の観点は?
- → 案1はこれまで取り組みの延長線上であり現状を考えると難しさがある。案3についてもすぐには実現が難しい。そのため、「実現可能性があるのか」「効果がどれくらいあるのか」という観点からは案2の評価が高い。
- ガラスびんより他の容器のプロモーションの方が大規模かつ戦略的であるという指摘があがっている。ガラスびんはどちらかというとプレミアム性・機能性などを訴求しており、環境に関する情報発信が少ない。たとえばペットボトルのように商品のCMの中で環境負荷についての情報発信もするというのもありではないか。
- クラフトビールはメーカーが小規模なので、個々のメーカーごとではなく全体の取り組みとしての方が可能性があるのではないか。
- → クラフトビールは少量生産であるがゆえに(缶が大量生産に向いているのに対して)びんとの相性はいいが、地域の中でびんリユースを進めるという点においては難しさがある。ただし全国的な取り組みとなると、統一びんという論点についても検討していかなければならない。
- びんをいかにリユースするかという点だけでなく、(消費者アンケートにもあった通り)びんの中身が重要なのではないか。リユースびんの中身を探す働きかけに力を入れていく必要がある。
- すべての世代において料理に対する関心が高いので、料理家とのコラボレーションでもインパクトがあるのではないか(レシピを提案してもらうなど)。
- 全国的に水道水を販売する動きがあるので、水道局などともコラボの可能性があるのではないか。
- リユースびんの分かりやすい情報発信や効率的な回収について検討する上でも、もっと「おしゃれ」などの(ライフスタイル寄りの)視点を取り入れていく必要がある。たとえば、認証マークを「おしゃれ」で「中身を際立たせる(美味しそうに見える)」ものにしていくなど。
- 東京オリンピックに関して、1月にリリースされた「持続可能性に配慮した調達コード 基本原則」の中で @どのように供給されているのか Aどこから採り、何を使って作られているのか Bサプライチェーンへの働きかけ C資源の有効活用 の4つを重視するという原則が示されている。その中でびんの位置付けがどうなっているのかを考え、クリアしていくことが、リユースびんをオリンピックで使ってもらう・展開させていくための課題である。
(4)今後のびんリユース推進に向けた取り組みについての議論
◎ 会場での主な意見交換
- 廃棄物については自治体との関係が非常に強いが、自治体の意識がまだ低く、神戸市のような先進的なところは例外中の例外という状況である。だがパリ協定の温暖化対策計画と廃棄物行政は別物ではなく、低炭素社会と循環型社会を合体させた長期ビジョンを自治体に持ってもらうことが重要。環境省で自治体の一斉教育をやるとだいぶ違うのではないか。
- びんの魅力を訴求することも大切だが、どれがリユースびんなのかということを伝えないと、消費者が協力しようと思ってもできない。ハードとソフトの両面を上手くミックスしてやっていくことがライフスタイルの変化にも繋がっていく。これからが本格的なリユースの挑戦、復活である。
- 消費者がびんをきれいな状態で回収に出しても、自治体や酒屋などの回収方法によってはリユースできない状態になってしまう。特に今は自治体を通じての回収が多いので、自治体への指導を行うなどして、きれいな状態で出されたびんをきれいなまま回収できるシステムを作っていくことが理想である。
- びんリユースについては“昔のことを語る”観点に陥りがちだが、“将来に向けて現実的に何ができるか”という観点から情報を伝えていく必要がある。
◎ 閉会のご挨拶
環境省 廃棄物・リサイクル対策部 企画課 リサイクル推進室 室長 田中 良典 氏
「本日は14回目の検討会に際して、これまで取り組んでこられたプロジェクト、ワーキンググループでの発表をいただきまして本当にありがとうございます。
これまでの皆さんの努力で構築した一升瓶・ビールびん・学乳びん等の流通システムを、いま一度点検して消費者のライフスタイルに対応できうるものにブラッシュアップしていくことが必要であると考えております。
今年度は、リユースびんをめぐっては政府の中で大きな動きがあったと思っています。一つは、容器包装リサイクル制度の見直しの合同会合。報告書案の中で、リユースびんの利用を促進するためには製造・流通・消費・回収・洗びんの各段階において利便性を高める工夫が必要であり、例示として、リユースびん規格の統一化、あるいは回収に対するインセンティブ等の促進を検討するということが挙げられております。また、2020年、2030年に向けた地球温暖化対策計画についても、あわせてパブリックコメントをまとめている最中でございます。
そうした中で、28年度から30年度がどういう年かと俯瞰しますと、28年度は循環基本計画の最後の点検の年であり、29年度にそれぞれ見直しの審議をおこない、30年5月には見直した計画を閣議決定しないといけません。そういったタイミングの中で、今日の議論を活かしながらリユースびんの裾野を広げるためにやらなければいけないことをしっかり検討して、来年度につなげていきたいと考えています。
雑駁ではございますが、これまでの成果を活かして、リユースびんの在り方を新しい計画に位置付けていく上で、皆さんのお力を借りていきたいと思っております。引き続きのご協力を頂ければと思います。」
座長よりひと言
一般財団法人持続性推進機構 理事長
独立行政法人製品評価技術基盤機構 前理事長
国際連合大学名誉副学長、東京大学名誉教授
安井 至 氏
「今は皆様の認識を上回る大変な転換期に入っています。ひとつはパリ協定における地球温暖化対策、あとは日本の廃棄物行政も色々変えないといけない状況になっており、それが何となく共通認識になりかかっているところなんです。
そういった方向が皆さんに認識されると、一部には抵抗勢力も出るだろうけれど、全体的な動きとしては新たなステージに行けるかもしれない。今はちょうどそんな時期に差し掛かっているように感じます。最後に環境省側からも何となくそんな雰囲気の決意表明もあったので、半歩前進する可能性が――(本検討会を)14回やってきた中では一番進む可能性があると感じます。今までは、現実的な話を場合によってはしすぎたのかもしれません。
世の中を、わたくし個人的には「大転換時代」と称しています。大転換時代というのは、とにかくある意味で全ての人間が、一般市民も企業の経営者も全部、これから先どうなるのかを考えなければいけない時期になっており、その方向性は地球環境によって決められている部分があるので、環境問題などに対しても皆さんの理解が徐々に進むのではないかと思います。そうなってくると、我々も新しい次の世界に対して、ある意味の提案をしていける時代になるような気がする。今日はそのスタートポイントかもしれません。」