第13回 我が国におけるびんリユースシステムの在り方に関する検討会
開催日時 | 2015年3月23日(月) 13:30〜15:30 |
開催場所 | 大手町サンスカイルーム 27階 D室 (東京都千代田区大手町2-6-1 朝日生命大手町ビル) |
検討会 会場
第13回我が国におけるびんリユースシステムの在り方に関する検討会が開催され、下記報告が行われました。
(1)平成26年度びんリユースシステム構築に向けた実証事業の成果報告
(2)平成26年度 学校給食用牛乳びんの導入に向けたモデル事業の成果報告
(3)平成26年度の調査・検討事項
検討会の内容
(1)平成26年度びんリユースシステム構築に向けた実証事業の成果報告
1. 秋田びんリユース協議会の取組み
清酒720mlビンのリユースシステムを探ることを目的としている。平成26年度は次の2つの事業を実施した。
- @ 720mlびんを回収し、びん種別の回収量と洗びんした状態での使用可能率の推計。回収対象地域は秋田市をはじめとした秋田県全域の基礎自治体、酒販店、業務店など。Rびんを含む全ての720mlびんを回収対象とした。
- A 規格が統一されていない720mlびんを効率よくリユースしていくために、びんの仕分け・選別を効率的に行う仕組みの構築を検討した。
<成果報告>
- ・回収対象地域より、約3200本の720ml茶びんを回収した。その内、酒販店などから回収したびんのうち75〜80%、行政回収では約70%がリユース可能なびんだった。
- ・@の回収により、流通する720ml茶びんが12種類存在することが分かった。重量判定表の作成やメーカーの刻印の判別の自動化を検討した。
2. NPO団体岡山賢人プロジェクトの取組み
- @ 地産地消・リユースの推進を図るため「清水白桃」の飲料を開発・普及
- A リユースの認知度のさらなる向上を図ることを目的にリユースびんのカーボンフットプリント(以下CFP)の評価シナリオの拡大を図る。
- B 岡山大学・行政機関での試飲・試験販売(10円デポジット)の実施による普及啓発の取組み。実態調査によるリユースびんに対する認知・態度、普及・回収を推進に対する課題を明らかにする。
- C 岡山地域におけるリユースびんに関わる関係者との意見交換会を実施。実態の把握・課題の整理し、協力者のネットワーク構築とリユース普及の組織的基盤を確立。将来的に岡山県(あるいは中国地方)でのリユース推進を継続的に進めるための組織の設置を目指す。
- D 報道機関に対して積極的な情報提供・発信を行い、リユースに対する社会的な認知度・気運を高める。
<成果報告>
○商品名「OKAYAMA PEACH CIDER」
岡山県産清水白桃」とした(内容量:220ml、賞味期限:1年、製造:3000本)。地元岡山県産の清水白桃果汁と山桜の蜂蜜を使用することで、市民への訴求力の高い飲料を開発した。普及のためチラシ・ポスターを作成した。
びんリユースシステムの構成は以下である。
- ・飲料の製造・充填・洗びん:桜南食品(株)
- ・岡山圏内での飲料の保管・販売先までの配送・空きびん回収:(株)リカーランドアヤノ
- ・飲料の企画・開発、実施・とりまとめ:岡山賢人プロジェクト・岡山大学廃棄物マネジメント研究センター
- ・OKAYAMA PEACH CIDER 岡山県産清水白桃」にReduce(びんの軽量化)、Recycle(分別収集・リサイクル)の2つのシナリオを加えた4つのシナリオのCFPを評価し、それぞれのCO2 削減効果を分かりやすく表示した。
- ・岡山県庁職員89名を対象に調査を行った。
リユースびんに対して環境に良いイメージを持ち、購入に積極的な人が半数程度であることが確認できた。こうした市民を対象としてリユースの習慣化を促し、リユースを社会の中に定着することが必要である。また、高い回収率を維持するための預かり金額の設定やびんの返却や回収の負担感を軽減させるような販売方法の検討が必要である。 - ・リユースびん入りワインの回収実験では月2000本程度の回収を想定(将来的には月2万本程度を目指す)。
◎ (1)に関するご意見ご質問
- 地域においてどれだけ雇用効果をもたらすかも、びんリユースの取組みの重要な点だと思う。今後人は必要になっていくのか、それとも人が必要でなくても回っていく仕組みになるのか。
- → これまではびんの知識のある専門家でないと選別できなかったものを、機械化によって普通の人が選別出来るようになることを目指している。実現すると費用面では削減が見込まれる。大幅な効果は難しいが、1人、2人の雇用拡大はある。
- → 岡山はフルーツの県なので、原料提供の事業者からは、この事業がうまくいけば拡大していこうと提案されている。この事業がうまくいけば雇用は生まれるのではないか。
- 秋田のプロジェクトで初期投資のコストを知りたい。
- → プロトタイプなのでコストはかかっている。PCに接続できるタイプの重量計は4万円。PCは開発環境で5,6万円。将来的にはアンドロイドにして1,2万円に抑えたい。
- びん種の多さに対して。行政がイニシアティブをとって規格統一に取組んでくれれば、色んなところで合理化が図れるのではないか。事業と併せて規格統一を図っていく等の考えはあるのか。
- → 回収量の多い3アイテム4アイテムに絞って、酒造メーカーにメリットを伝えながらご提供できれば、メーカーもコスト面でも間に合うなら使うびん種を減らしていける提案が出来ればと思っている。
- 岡山の商品が魅力的だとある程度消費されそう。300円ということだが、結構高いと思うが売れたのか、教えてほしい。
- → 大手小売店はマージンが大きく、価格設定が高くなる。
- → 飲食店等の場合は売りやすい価格設定ができるため、商品が動くのではないかと考える。
- 商品開発についてはどう評価しているか。
- → 原料を探すところから始まり、果汁何%かという検討や香料の選定にモニターアンケートを行った。今後は少し高級志向なものの開発や岡山には果物が多いので他の地域資源の活用を発展の鍵として期待していきたい。
- Rドロップス2号を使うことでの問題点などがあれば教えてほしい。
- → ふたの部分が王冠口だと栓抜きが無いと開けられない。ガラスびんメーカーと相談したい。
(2)平成26年度学校給食用牛乳びんの導入支援に向けたモデル事業の成果報告
1. びん再使用ネットワークの取組み
- @ 2013年度に立ち上げた「学乳びん導入支援プロジェクト」を準備会からモデル事業に
- A “平成26年度学校給食用牛乳びんの導入支援に向けたモデル事業”の次なるステップとして、「子供たちのびん牛乳に対する評価を検証する」ため普段紙パック牛乳を飲料している子供たちにびん牛乳を試飲提供し、アンケート調査を行った。
<成果報告>
- @ 「学乳びん導入支援プロジェクト」メンバーで都内自治体へのアプローチを継続。ヒアリングを行い準備会合を重ね、正式なプロジェクト会合を2014年10月にスタートした。
- A 「学校給食におけるびん牛乳は、中身が見えて、冷たくておいしいと子供たちに評価されていること、校内での食育や環境教育に資するもので、子供たちの生活力の向上に資するものである」ことが明らかなった。ところが、現状では、全国での学校牛乳びんの取組みは低減の一途を辿である。その理由として「びんの回収・洗浄のため、価格がアップすること」などが指摘されている。
今後のびん牛乳の普及のためには、これらの原因を明らかにしつつ課題を解決できるよう関系省庁の連携による公的な支援が必要ではないかと考えられる。
2. かながわ環境カウンセラー協議会の取組み
神奈川県の学校給食用牛乳びんの導入状況は大井町の全校と山北町の一部の小中学校に限定されている。
牛乳びんを使用していない中井町及び牛乳びん使用を継続している大井町、山北町を橋頭保として、中井町、大井町、山北町の近隣市町村への導入を目指すため、@〜Cを行った。
中井町、大井町、山北町ではびん牛乳も納入しているあしがら乳業と循環ルートが出来上がっているので導入の可能性は高いと考えた。
- @ 中井町立中村小学校での試飲会とアンケート調査の実施
- A 開成町・山北町でのアンケート調査の実施
- B 川崎市教育委員会への当取組みの情報提供
- C 文献調査によるLCAデータの収集
<成果報告>
- @ 生徒たちのほぼ全員がびん牛乳を全部飲み、過半数がおいしい、また飲みたいと回答した。学乳びんに関する認識(神奈川県内での、びんの使用率やリユース回数について)の低さが明らかになった。
- A 処理状況について調査を実施した。びん牛乳は洗浄または洗浄せず、キャップをして納入業者に返却されていた。
- B 川崎市へびん牛乳の学校給食への導入を提案した。中学校給食推進室からは検討課題として、
1)学乳びんの供給能力
2)保管庫の必要容量
3)運搬(重量)の課題
4)政令指定都市におけるびんの採用実況
等が挙げられた。小学校でも同様の検討課題があるが、情報交換を行い導入に繋げたい。 - C収集した情報からリターナブルびんで複数回使用することによって紙パックに比べて、CO2の排出量は減少すると見られている。
3.大和びんリユース推進協議会の取組み
- @奈良市における学乳びんの情報発信の取り組み
- A本年度では、学校給食を導入している市内57校の小・中学校に対して学校給食用牛乳容器(紙・パック)の利用実態を把握し、平成27年度以降においての基礎データとして活用する
- B奈良県内地方公共団体びんリユース導入可能性調査
- C奈良市・生駒市をモデルとして、奈良県内における他の地方公共団体へのびんリユース導入可能性を調査する
- Dリユースびん入り大和『と、わ(To WA)』の普及促進協力及び情報発信
- E本商品の普及促進協力と情報発信を行い、地域に根差したびんリユースの促進を図る
<成果報告>
- 1)学校への調査
紙パック・学乳びんの採用条件は、小学校と中学校において異なることが分かった。小学校の特に低学年においては学乳びんの「重さ」・「割れる」の観点から導入は困難である。中学校においては中学校においては、学乳びんの利便性から導入への意欲を確認した。 - 2)乳業メーカーへの調査
学乳びんによる環境負荷低減効果は認識している。需要があれば十分に供給できる。紙パックに比べ、空きびん回収及び洗浄機械設備維持・輸送時積載効率の低下により若干学乳びんの方がコスト高である。学乳びん導入促進の取組を実施する上では、当該地域の教育委員会事務局担当課との連携体制の構築が不可欠である。それを以て学校現場へ赴き、学乳びんの有効性を発信し理解を深めることが重要である。
◎ (2)に関するご意見ご質問
- 紙パックの牛乳とびん牛乳では中身が違うのか、びんでは重いとの指摘があるが使用したびんは軽量びんか。
→ びん再使用ネットワークでは、紙とびんで殺菌方法が異なる牛乳を使っている。びんの方は低温殺菌の牛乳なので高温殺菌の牛乳より焦げ臭が少なく、飲んだ感じがより原乳に近いのではないか。普通のびん使っているため軽量びんではない。
→ かながわ環境カウンセラー協議会では、紙パックの牛乳もびん牛乳も同じ企業から買っているため中身は同じ。特に軽量びんは使っていない。
- コストアップが課題だが、どの程度コストアップしたか。
→ 奈良は県で一括入札なので変わらない。
→ びん再使用ネットワークでは今回は牛乳の製造元から距離があり、物流費用による値上がりが見込まれたため価格検討まで至らなかった。
→ かながわ環境カウンセラー協議会では、同じ企業から買っているので基本的には変わらない。紙パックからびんへの切り替えについて、びんはかさばるが設備はそのままで問題ないため設備面での負担もない。
- かながわ環境カウンセラー協議会や奈良市では安全性や重さが課題になり、一方で学乳再使用ネットワークでは、びんケースの運搬での作業等で1人じゃなくて2人でやるという協同を学べるかもしれない可能性が示唆された。プロジェクトの課題が別のプロジェクトで回答されていたので、事業間での相互関係を構築すればもっとお互い何かできるのではないか。
(3)平成26年度の調査・検討事項の報告
◎ 地方自治体におけるリユースびん取組状況調査(アンケート調査結果)報告
- ・目的
- 地方自治体における取組み状況の現状と課題を整理し、今後の取組み推進に必要な施策の検討を行うこと
- ・調査対象
- 全市町村及び都道府県
- ・結果
- 全国の都道府県市区町村へびんリユースの取組状況(回収状況、地域における取組み状況等について)では、リユースびんを一つの収集区分としているとの回答は全体の1割程度であることが分かった。また、収集中、収集後のリユースびんの抜き取りの実施状況は、ガラスびんと一緒に収集しているところでは約3割、空缶、PETボトル等に含まれているところでは約2割だった。リユースびんの抜き取りを行わない理由としては「そもそも検討したことがない」という回答が最も多かった。びんリユース促進事業については、重要な課題ではあるが、優先して取り組む課題ではないという認識があり、びんリユースに関する住民への啓発も実施していないが最も多い回答だった。グリーン購入法の基本方針改正については、都道府県では68.2%が「知っている」という回答に対して、市町村では74.4%が「知らなかった」と回答した。
◎ 学校給食における牛乳びんリユース等導入可能性調査(アンケート調査結果)報告
- ・目的
- 学校給食における牛乳の容器選定プロセスや容器種類の現状を把握すると共に容器選択に関する自治体の意向やびんを選択するうえでの課題を洗い出し、今後効果的に学乳びんを普及させるための方策の検討材料とすること
- ・調査対象
- びん容器の使用比率が5 割以上の都道府県における都道府県教育委員会と同都府県下の市町村委員会、政令指定都市の教育委員会
- ・結果
- 学乳容器の現状は、近年は容器の種類についてはほぼ変化は見られない。今後の学校牛乳の容器種類についても、現状維持が8割に上った。牛乳メーカーの選定方法は、8割の市町村においては都道府県あるいは都道府県の学校給食会によって選定されており、その内約3割が何らかの要望を都道府県に挙げることが可能となっている。以上を踏まえ、本調査対象自治体のような学乳びんの普及率が高い自治体においては、現状維持を超えて、さらに学乳びんの普及率を高める方策の検討が必要と考えられる。
◎ (3)に関するご意見ご質問
- リユースびんの分別区分を設けている市町村が10.4%とあるが、地域的な特徴や人口比などの観点から分析すると何か傾向が出てくるかもしれない。
- 市町村の方針としては現状維持が最も多かったため、びんについても増やしたいとの声は上がっていない状況。
- 市町村で各学校へ容器に関する要望は上がっているようだが、それが最終的に入札に考慮されるかは地域によって様々である。
- グリーン購入法の改正内容でのびんリユースの位置付けが配慮事項では、認知度の低さにつながってしまうのではないか。
- びんリユースの中心になっているお酒の取組みと少し距離があると感じた。地域での協議会を作りながら地域の取組みでびんリユースを復活させていこうとの考えですから、それぞれの取組みにプラスαで地域の酒造組合、酒蔵、びん商がどのように参加できるか、一緒にやりましょうと地域の取組みやりましょうと呼びかけることが大事ではないか。
- 現在の市町村の処理方法だと最終的にカレット処理になるため、そのシステムを変えなければボトラー、メーカーがいくらいいリターナブルびんを出しても、なかなかいい形で回っていかないのではないか。
- 2020年の東京オリンピックとびんリユースが各種審議会、協議の中に登場できるようにしていくべきではないか。
◎ 閉会のご挨拶
環境省 大臣官房廃棄物・リサイクル対策部 企画課 リサイクル推進室 室長 庄子 真憲 氏
「23年度から進めてきたびんリユースシステムの実証事業ですが、各地で地域の協議会が立ち上がり全国的に地域のびんリユースの導入が促進されていまして、実証事業を通じて得られた課題について、今後の自律的継続的な取組みのために、どういった促進方策が必要か、来年度も先生方からご指導をいただきながら実施していきたいと思います。
学乳びんの取組みに関しましては、今年度モデル事業を実施していただきました。学校給食における3R、2Rの取組みに関しましても、牛乳びんのみならず食べ残しを減らすなどの学校給食における環境教育・食育の在り方も含めて総合的に考えていきたいと思っております。
容器包装リサイクル法の見直しは現在審議の最中ですが、2020年東京オリンピック・パラリンピックにおける開催会場でのリユースびんの利用をなど、そういった機会を捉えて、東京からびんリユースの取組みを発信、展開していきたいと思っております。様々なびんリユースの促進に関する課題がございますが、今後も引き続き先生方のご指導を賜りますようよろしくお願い申し上げます。本日はどうもありがとうございました。」