リターナブルびんポータルサイト



検討会・シンポジウム

第12回 我が国におけるびんリユースシステムの在り方に関する検討会

開催日時 2015年1月13日(火) 15:00〜17:00
開催場所 大手町サンスカイルーム 27階 D室
(東京都千代田区大手町2-6-1 朝日生命大手町ビル)

検討会会場
検討会 会場

 第12回我が国におけるびんリユースシステムの在り方に関する検討会が開催され、
(1)平成26年度びんリユースシステム構築に向けた実証事業
(2)平成26年度 学校給食用牛乳びんの導入に向けたモデル事業 の進捗状況の報告
(3)びんリユース推進に向けた取り組み事例
の紹介が行われました。


検討会の内容

◎ ご挨拶

環境省 大臣官房廃棄物・リサイクル対策部 企画課 リサイクル推進室 室長 庄子 真憲 氏

 「現在、環境省の中央環境審議会、経産省の産業構造審議会において、容器包装リサイクル制度の見直しの議論をすすめており、その中でも、容器包装の2Rの取り組みをいかに促進していくかが、ひとつの大きな課題となっている。
 2Rのリデュース、リユースの中でもリユースについては、特にびんのリユースの促進を今後どのように図っていくかは、今後非常に難しい課題が多いところではあるが、リユースびんがどんどん少なくなって、ワンウェイびんや他の素材にシフトしてきている中、なんとか底支えをして、地域における取り組みを展開していきたいと考えており、今回の容器包装リサイクル制度の見直しでも重要課題として考えている。
 びんリユースシステム構築の実証事業については、今年度は5地域で実施し、本日は進捗状況の報告を行う。また、昨年度から、学校給食で使用される牛乳びん、「学乳びん」のモデル事業を3地域で行っている。これまでのびんリユースシステム構築実証事業を通じて、昨年3つの地域で新たに協議会が立ち上がった。そういった地域での取り組みが着実に進んできていると思っている。
 ただ、実証事業は今年度で4年目を迎えることとなり、来年度以降、次の展開を考える必要がある時期と考えている。びんリユースの検討あるいは取り組みについて来年度以降どのように進めていくかご検討いただきたいと考えており、検討会は本日を含め2回予定している。次回は3月に予定しているが、別にシンポジウムも予定している。ぜひ先生方の忌憚のない意見をちょうだいしていきたい。
 本日は今年度の実証事業や学乳びんモデル事業の進捗について報告をし、また、京都市、びんリユース推進全国協議会から取り組みのご紹介をいただいて、今後のびんリユースのあり方について貴重なご意見をいただき、私どももしっかり考えていきたいと思うので、本日はよろしくお願いいたします。」

座長 安井 至 氏

 「なかなか2Rは社会的に難しいですが、それはある意味でこの社会というものが本来あるべき2Rと違う方向へ逆行している、環境問題って大体そうなんです。今年はCOP21が行われて、気候変動もちょっとはベクトルもあるべき方向へ動いているのではと思っているのですが、そうは上手くいかない。どちらも同じ思いはあと数年続かなきゃいけないのかと思っております。よろしくお願い申し上げます。」


(1)平成26年度びんリユースシステム構築に向けた実証事業について

1. 秋田地域でのリユースシステム構築に向けた720mlびんの仕分け・選別システムの開発・実証
  /秋田びんリユース協議会(秋田県)

 平成24年度の成果を踏まえた実証事業2年目。対象びんは清酒720ml茶びん。秋田地域での720mlびんのリユース推進に向け、720mlびんを対象とした識別・認識システムの開発を行い、実証・改良、選別した720mlびんを実際に酒造メーカーでリユース利用する。加えて、東北6県・他地域への展開方策を検討する。想定される回収本数は1万本程度。

2. 関東甲信越を対象としたびんリユースシステムの構築 /関東甲信越びんリユース推進協議会
  (東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、群馬県、栃木県、茨城県、新潟県、山梨県、静岡県、長野県)

 平成25年度に引き続き実施する実証事業2年目。対象びんは清酒、ワイン、飲料、調味料、サイダー、地ビール等種類を限定せずに検討している(山梨県での実証事業ではワインびんを対象)。
 平成25年度の成果を踏まえて、平成26年6月20日に関東甲信越びんリユース推進協議会を設立。昨年度からの継続的な取組として、インターネット掲示板を活用した回収びんの情報交換・需給マッチングを進めている。大きく3つの事業、地方自治体等における会議等でのリユースびん利用促進に向けた導入実験、山梨県において小売店等と協力したリユースびん入りワインの回収実験、飲食店チェーンのクローズドびんリユースの展開検討を行う。
 リユースびん入りワインの回収実験では月2000本程度の回収を想定(将来的には月2万本程度を目指す)。

3. 大阪リユースびん入り飲料「茶々」を用いた普及啓発・びんリユース促進事業
  /大阪びんリユース推進協議会(大阪府)

 平成25年度に引き続き実施する実証事業2年目。大阪府内43市町村に対してびんリユースに関する実態調査を実施、アンケート・ヒアリング調査より会議等での率先利用及び市民等への普及啓発を働きかける。昨年度の事業で開発した大阪撰茶「茶々」を広報・PRのシンボルとして活用、全てのびんを対象とした普及啓発を実施。推進組織として大阪びんリユース推進協議会が中心となり、大阪産業大学 花嶋研究室、大阪府内市町村と連携して進めて行く。想定される回収本数は3000〜6000本程度。

4. リユースびん入り大和茶『と、わ』を中心とした地方自治体におけるリユースびん利用促進事業
  /World Seed(ワールド シード)(奈良県)

 平成24〜25年度の成果を踏まえた実証事業3年目、最終取組年度としての課題解決と3カ年の総括を行う。
 奈良市及び生駒市での実績を踏まえ、県内地方自治体でのびんリユースシステム構築の可能性を調査し、導入促進に努める。奈良県内での実績を踏まえ、神戸市においてびんリユースシステムの構築を図るための調査及び実際に使用することによる実証事業を行う。
 また、地域間の情報共有・取組促進に向けた他地域びんリユース推進協議会との意見交換会を実施する。
 回収本数は年間54000本を目標としている。(※年間の総普及本数約60,000本、回収率90%と想定)

5. 新たなリユースびん飲料の開発及びびんリユース推進のための協議会的組織の設置の検討
  /NPO団体岡山賢人プロジェクト(岡山県)

 平成25年度に引き続き実施する実証事業2年目。地産地消・リユースの推進を図るため「清水白桃」の飲料を開発、リユースの認知度のさらなる向上を図り、行政機関等で試飲・試験販売を実施、リユースシステム構築のための課題を明らかにする。
 本年度は、リユースびんのカーボンフットプリント(CFP)の評価シナリオの拡大、行政機関との連携による試飲・試験販売・回収実験の実施、岡山地域における様々な関係者との意見交換を通じたびんリユース推進基盤構築の検討を行う。

◎ (1)に関するご意見ご質問
  • 関東甲信越を対象としたびんリユースシステムの構築でリユースびん入りワインとあったが、ワインのびんはリサイクルにおいてあまり有効性ではない印象があり興味深く、詳しくお話し頂きたい。
  • → 丸藤葡萄酒工業株式会社が作っている720mlのワインびんを使用。これまでも洗浄することでリユースできる状況はあったが、大々的にリユースについて広報してはいなかった。今回、山梨県内の小売店、スーパーヤマトの店舗と連携をすることで、回収され洗浄後に丸藤葡萄酒工業株式会社で使用される。既存のびんを大々的に回収実験を行った。
  • 秋田地域でのリユースシステム構築に向けた720mlびんの仕分け・選別システムの開発・実証の今年度の具体的取り組みに、「識別・認証システムの実証」とあるが、この識別は自治体での識別なのか、びん商での識別なのか、どこを想定しているのか知りたい。
  • → びん商で識別をすることを想定していると伺っている。
  • 四合びんや720mlびんは種類が多く、似た形状のびんがあることから、メーカーからもある程度統合したいという話も出ている。

(2)平成26年度 学校給食用牛乳びんの導入に向けたモデル事業について

1. 学乳びん導入支援プロジェクト /びん再使用ネットワーク(東京都)

 昨年度の成果・結果を踏まえて、都内の学校での学乳びん導入可能性を検討する。びん牛乳の特徴を整理したパンフレットを作成し、都内の教育委員会・個別の学校との意見交換を通じて、学乳びん導入に関心があり、試飲会等に協力いただける学校と協議・調整を行う。
 びん牛乳の試飲会を開催し、教師・生徒・栄養士等へのアンケート調査・ヒアリング調査を実施、導入可能性を検討する。

2. 神奈川県内での学乳びん導入に向けた関係構築、導入促進事業
  /かながわ環境カウンセラー協議会(神奈川県)

 県内足柄上地域の各教育委員会とのヒアリング・意見交換を通じて、びん牛乳・紙パック牛乳の導入状況について調査。びん牛乳の導入に関心のある教育委員会の協力を得て、試飲会を実施、教師・生徒・栄養士等へのアンケート調査・ヒアリング調査を通じて導入提案を行う。また、新たに学校給食を開始しようとする市町村教育委員会との意見交換を通じて、びん牛乳導入の提案を行う。

3. 奈良市における学乳びんの導入促進事業 /大和びんリユース推進協議会(奈良県)

 奈良市教育委員会の協力を得て、学校長宛に学乳びん導入に関するアンケート調査を実施。また、奈良地域に供給可能な近隣乳業メーカーにおける供給体制等について実態調査を行う。
 本年度は、実態調査の結果を踏まえて学乳びん導入の条件を整理とともに、関係者による導入検討会議を開催、導入に向けた具体的な検討、導入支援を行う。

◎ (2)に関するご意見ご質問
  • 牛乳びんは国内で約8億本の流通があり、リユースびん全体で約26億本のうちの三分の一を占めている。また、そのうちの9割9分がリユースびんの状態で回り、30回、40回と再使用されている。また、宅配や学校給食用の場合、回収率が極めて高い点からも牛乳は着眼点が良かった。
  • びん牛乳の供給ができない県が多く見られる。学校側の視点では置き場がない、飲み残の処理など様々な課題があると思う。今回のモデル事業どういうことが明らかになり、例えばどういういうな成果が期待できるのか。
  • → 三地域では、各地域について詳細な実情が明らかになる見込み。また、事務局では学乳びんに関するアンケート調査を予定し、市町村の教育委員会等に、どういう条件で容器を選定しているのかなどを明らかにしていきたい。
  • 牛乳メーカー側の、供給サイドの製造ラインの問題だと思う。供給サイドを調べないと、結局本当の壁のところがよく分からないという状態になってしまうのも問題。
  • 一度びんから紙パックに切り替えている工場に、もう一度びんに戻すことができるのか、不可能ならば、びんラインが残っているところに頼むしかないのか、調べていただきたい。
  • → (小平市を例として)工場のラインの変更や事業計画が、容器の選択に大きく寄与している。また、市町村の担当者が、どちらを選択をしたいのかという時に、メーカーとマッチングできる時とそうじゃない時があるが、紙パックからびんに変わる時は、市町村担当者が声を上げているということが、今まで100パーセント実例としては上がっている。
  • 京都市では、紙パックを児童に一生懸命洗ってもらっても、リサイクルしているところがなかったので、遠方に運んでリサイクルしてトイレットペーパーにしてまた学校に戻したりして市民の方に使っていただいているという状況で、疑問を感じざるを得ない。LCA的な検討も必要ではないか。
  • 紙パックから牛乳びんに戻す際にどういうことが承認となっているのか。事例を教えてほしい。
  • → 全てを把握してはいないが、一つは保管庫の問題。学校の中の牛乳を一時的に保管する冷蔵庫が、びんと紙パックで大きさが違う可能性があり、びんでは入りきらない場合も考えられる。また、各教室に運ぶ時に、安全に上の階まで運べるのかという問題。どうしても低学年への負担は重くなるので検討が必要である。
  • 各自治体、教育委員会、父兄のところへ、なぜびんリユースを私たちは勧めようとしているのか、あるいはなぜ紙パックが優先して変更になってきたか、この情報が伝わっていない。学校給食という食育の中身にびん牛乳の重要性を深く入り込んでいかないといけないと今、認識している。

(3)びんリユース推進に向けた取り組み事例(ヒアリング)

1. 京都市リユースびん回収の取組
  /京都市環境政策局 循環型社会推進部まち美化推進課 担当課長 三科 卓巳氏

 京都市では、「平成32年度までにごみ量(受入量)をピーク時の半分以下の39万トンにまで削減する」という挑戦的な目標を掲げた、「みんなで目指そう!ごみ半減!循環のまち・京都プラン− 京都市循環型社会推進基本計画(2009−2020)」を着実に推進するため、ごみの減量と共に、資源物回収とリサイクルを積極的に展開している。
 こうした中、洗って繰り返し使えるリユースびんは、リサイクルするよりも環境に与える負荷が小さいため、京都市では、平成16年度からリユースびん等の拠点回収事業を実施している。

2. 教科書から見る2R教育
  /Rびんプロジェクト、大阪府地球温暖化防止活動推進員3R推進チーム、くるくる
    運営委員 西村 優子氏

 学校教育の中で授業や教科書の中では3Rについて教科書を調査した。学校教育の中で、環境科という教科は無いため、全ての教科書を見る必要があるが、小学校の3・4年生からごみの学習が始まることから、日本文教出版の小学社会3・4年について調べた。結果、フリーマーケットや3Rも扱われているが、優先順位についての掲載は無く、3Rが同等に扱われていることが分かった。

3. 2R(リデュース、リユース)環境教育の取組み報告
  /びんリユース推進全国協議会 運営委員 中村 秀次氏

 一般的に3Rのうち“リサイクル”のみが認識されている。教科書でも3Rの文字は書かれているが、優先順位のことや、その意味・意義などの説明の不足、教師への2Rの具体事例などの情報提供が少なく、2Rについて、どのように教えたら良いかがわからないという現状があるため、特に教師への3Rの意味や2Rの事例などの情報提供の必要性、さらに、3Rの授業展開事例も情報提供する必要があると考えた。
 そこで、平成25年度2R環境教育プロジェクトを立ち上げ、教師用ガイドブックの作成や、2R環境教育セミナーでの意見交換を実施、ガイドブック、授業ツールを広く活用いただけるようホームページで公開するなど、取組んだ。

◎ (3)に関するご意見ご質問
  • 京都市のように資源ゴミの回収が混合回収で、拠点回収、資源ゴミで出すのではなく、拠点に出して下さいという対応でリユースびんの選別をお願いしているというパターンがある。全国的には混合収集をしている大都市が多く、京都市はその中での事例の開発で期待するところが大きい。
  • 教科書の取り組み大変興味深く伺いました。ほんとに大変だと思うんですが教科書の副読本というのがある、先生のガイドブックが非常に良くできているので、是非これを継続して活用していただきたい

(4)平成26年度の調査・検討事項について

・ 学校給食における牛乳びんリユース等導入可能性調査
・ 地方自治体におけるリユースびんの取り組み事例調査
・ 宅配食におけるリユースの導入状況に関する基礎調査
・ びんリユースシステムの成功事例集の追加、更新等

座長よりひと言

 検討会を終えて、座長である製品評価技術基盤機構 理事長 安井 至 様よりひと言いただきました。


安井至氏
安井 至 氏

 リユース瓶の普及をする活動を始めて、これで3年以上が経過、この委員会が一つの連絡の中心を担ってきた。その結果として、当初全国協議会だけが存在していたが、現時点では、多くの地域で、地域協議会も発足し、横の連携が取れるようになってきた。そして、それぞれの 地域協議会が、なんらかの活動を行うことができるようになってきた。委員会が動き出したときに比べれば、現時点の活力は、5桁ぐらい拡大したのではないだろうか。
 そもそもリユース瓶が衰退を始めた理由は、経済的な合理性だけを追求したら、使い捨てがもっとも合目的的で、リユース瓶は不要であるという理解が広まり、それが推進されたためであった。まあ、時代の流れであったと言えるだろう。
 気候変動問題がこれほど深刻になってしまった理由も、化石燃料の出す廃棄物、すなわち、二酸化炭素は、捨てるのがもっとも合理的で ある、という「使い捨て思想」がその根底にある。しかし、今後20年程度で、二酸化炭素を黙って排出することは、許されない状況になるだろう。すなわち、気候変動問題も、廃棄物問題だという理解になれば、日本の循環型社会形成の初期段階のように、世の中の理解も格段に進化することだろう。
 もともと廃棄物問題が重大だという理解に基づいて生まれた循環型社会の構築が、最終処分地の不足という問題だけを取り上げてきたのがそもそも の間違いで、気候変動問題も、廃棄物問題の一つであるという理解をすべきであった。
 日本の状況を見ると、地域の活性化という問題が、非常に重大な段階を迎えている。この問題の解決なしに、日本の未来は見えてこない。それぞれの地域内での地産地消もその一つであり、そのために最適な容器や包装はどのようなものか、ということも考えた上で、様々な提案がなされる必要がある。
 リユース瓶のもつ地域性という特徴を活かすには、それぞれの地域で、なんらかの活動が行われることが望ましいが、徐々にそのような体制が整備されつつあることは、極めて望ましい方向であると考える。
 全国協議会の代表として、さらなる努力をしてみたい。

今後のスケジュール(予定)

《びんリユース推進シンポジウム(予定)》
日 時: 平成27年3月11日(水) 13:30〜17:00(予定)
場 所: 都内会場を予定
主 催: 環境省


《第13回 検討会》
日 時: 平成27年3月23日(月) 13:30〜15:30(予定)
議 題(案):
 ・びんリユースシステム構築に向けた実証事業の成果報告
 ・学校給食用牛乳びんの導入支援に向けたモデル事業の成果報告
 ・その他