「ガラスびんリユースシステムのライフサイクル分析」報告書 2021年7月
ガラスびん3R促進協議会
1.目的
容器包装を取り巻く状況が資源循環・有効利用のみならず、海洋プラスチックごみによる海洋汚染や生態系への影響の懸念、地球規模のプラスチック廃棄物処理、脱炭素対応の急速化などの問題や要請が加わり、大きく変化している中、環境負荷の少ないガラスびんのリユースシステムを再認識および再評価する材料を提供する。
2.委託先
- 京都大学大学院地球環境学堂環境教育論分野浅利研究室
- 京都大学環境安全保健機構附属環境科学センター
3.方法
(1)対象びんと機能単位
- 対象びん
- 機能単位
一升びん(1,800ml)、ビール中びん(500ml)、丸正900びん(900ml)
対象ガラスびん製品を用いた国内消費量(内容量)の供給(2019年)、結果はガラスびん1本当たりに換算して表記
(2)システム境界
- 原料調達、新びん製造、回収、選別、カレット製造、廃棄(残渣の埋立)(各施設までの輸送含む)
- シナリオ間で差がない充填と消費プロセスは対象外
- リユースシナリオは回収・洗びん、再出荷も含む
- キャップやびんに貼付されているラベルの製造はシステム境界外。ただし、リサイクル・リユース工程で発生する残渣にはラベル滓等も含め、この処理もシステム境界内とした
(3)シナリオ設定
- ワンウェイ(リサイクルなし)、ワンウェイ(リサイクルあり)、リユースの3シナリオ(それぞれS1、S2、S3とする)
- ワンウェイ(リサイクルなし)シナリオでは、消費後に回収されたびんは埋立
- ワンウェイ(リサイクルあり)シナリオでは、回収後に選別除去工程を経てカレット工場でリサイクル
- リユースシナリオは99%が事業系回収、1%が行政回収。行政回収の洗びん工程は事業系回収と同様
- リユースシナリオの再使用回数は、一升びんは5回、ビール中びんは20回、丸正びんは5回
4.結果と考察
(1)結果
- 一升びん
- GHG排出量はS1:0.816 kg-CO2eq/本、 S2:0.632 kg-CO2eq/本、S3:0.281 kg-CO2eq/本
- S1と比べて、S2はGHG排出量を22.6%削減、新びん製造や新びん製造に必要な原料調達の削減効果が大きい
- S3はS2と比べ、GHG排出量を55.5%削減
- ビール中びん
- S1のGHG排出量は0.395 kg-CO2eq/本
- S1と比べて、S2はGHG排出量を22.4%削減
- S3のGHG排出量は0.089 kg-CO2eq/本、S2と比べて70.8%削減
- 丸正900びん
- S1のGHG排出量は0.387 kg-CO2eq/本
- S1とくらべて、S2はGHG排出量を22.4%削減
- S3のGHG排出量は0.139 kg-CO2eq/本、S2と比べて53.8%削減
一升びんのGHG排出量結果
一升びんリユースシナリオ(S3)のプロセス別GHG排出量内訳
一升びんのGHG排出量結果
一升びんリユースシナリオ(S3)のプロセス別GHG排出量内訳
丸正900びんのGHG排出量結果
丸正900びんリユースシナリオ(S3)のプロセス別GHG排出量内訳
(2)考察
- 機能単位(国内供給量)当たりのガラスびんリユースのGHG削減効果
- 1本当たりGHG排出量は値には大小あるが、シナリオ間の比較ではいずれも同様の傾向
- S1と比べたS3のGHG削減量は一升びん6.0万t-CO2eq/yr、ビール中びん12.9万t-CO2eq/yr、丸正900びん0.8万t-CO2eq/yr
- 再使用回数とGHG排出量
- リユースシナリオの再使用回数別のGHG排出量は、いずれも同様の傾向
- 使用回数当たりの削減率の変動幅は次第に収束することから、使用回数が少ない場合は使用回数を増やす努力が、使用回数が多くなるとびん回収、洗びんや選別工程等のライフサイクルの各プロセスの省エネ等の努力が、一層のGHG削減に効果的
- 商圏とGHG排出量
- 1本当たりGHG排出量の絶対値が小さいほど商圏の影響を大きく受ける
- 再使用回数が多い、あるいは軽量であるほど商圏への感度が高く、ビール中びんでは30〜500 km間でGHG総排出量に2.85倍の開きがある
- 30〜100 km程度の自治体規模の商圏でみるとGHG総排出量は1.17ー1.28倍程度の開きであり、この商圏の範囲ではS3はS2と比べて優位
- 再使用回数、商圏とGHG排出量
機能単位(国内消費量)当たりのGHG排出量結果
一升びん
ビール中びん
丸正900びん
一升びん
ビール中びん
丸正900びん
一升びん
ビール中びん
丸正900びん
5.結論
- いずれもリサイクルしないシナリオと比べてリサイクルシナリオが22〜23%のGHG排出量削減の効果
- 現状の回収率を想定したリユースシステムではリサイクルしない場合より66〜77%、リサイクルシナリオよりも54〜71%のGHG排出量を削減
- リユースシナリオでは洗びん、びん回収、排水処理プロセスの寄与が比較的大きく、さらにGHG排出量を低減するためにはこれらのプロセスの効率化、省エネ化が効果的
- 回収率が既に高い用途においては回収率の維持が重要であり、回収率を維持しつつ、洗びん工程等のライフサイクル各プロセスの省エネ化を図ることでさらに低炭素化が期待される
- 地域循環共生圏の概念が近年提唱されているとおり、高いびん回収率を実現する地域循環型のガラスびん利用モデルの検討とその効果検証が今後求められる